全5051文字
PR

ソリューション提案に向けた押さえどころ

 ソリューション提案に向けた最も重要なポイントは、エンドユーザーの視点で将来のクルマの役割を理解することにある。これまで多くのサプライヤーはOEMのニーズを聞いて整理し、求められる商材を提供してきた。OEM自身もモビリティーの役割・構造が複雑化し、最適解を提示できなくなりつつある中では、自社のクルマの将来像を踏まえた「バックキャスティング」(未来のある時点に目標を設定し、そこから振り返って現在すべきことを考える方法)による商材の姿と統合し、価値のあるソリューション案を提案することが重要になってきている。

 大手ティア1プレーヤーでは、既にこの取り組みを組織的に進めている。欧州の大手ティア1サプライヤーのソリューション提案に向けた取り組みのプロセスを見てみよう(図2)。

図2 ソリューション提案に向けた取り組み
図2 ソリューション提案に向けた取り組み
[画像のクリックで拡大表示]

 その特徴として、サプライヤーという立ち位置ながら、本社研究部門で社会動向のリサーチを徹底して行い、15~20年先の社会像を描画した上で、社会に求められるモビリティーの姿を自社なりに定義し、自社事業の周辺で進むべき方向を決め、ソリューション案・研究テーマとして取り組んでいる。

 バックキャスティングによる描画のみならず、事業部門の保有シーズや捕捉しているニーズ、OEMの長期戦略も踏まえた「フォアキャスティング」(現状分析や過去の統計、実績、経験などから未来を予測する方法)によるソリューション描画も並行して進め、顧客の持つ有望な採用シナリオと自社の考えるコンセプトの両面を踏まえながら、提案内容として落とし込みを進めている。

 これにはCTO(最高技術責任者)の持つ役割・権限の大きさも影響しており、社内の技術テーマ管理に追われがちな日系企業に比べて、欧州のティア1サプライヤーは、中長期的な社会像描画や取り組みの方向性への検討に力を入れている点にも触れておきたい。

 また、本社研究部門(例えば中央研究所)において長期的な社会像を描くにも、自社の閉ざされた視点だけでは限界がある。異業種との積極的な交流による社会像ニーズの多面的な観測を行うことも有効な手段となる。イノベーションラボを的確に活用し、シーズ開発のみならず、新たなニーズの発掘・ソリューションへとつなげていく視点を意識することがその一助となるだろう。