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十分な作業ヤードが確保できず…

 問題の工事は、以下のような手順で実施することになっていた。

 まず、堤防背後の斜面を1対0.8の勾配で掘削し、砕石などを詰めた厚さ50cmの布団かごをドレーンとして設置。次に、水平方向に1m程度の余盛りを伴う盛り土を敷きならし、厚さ30cmの層ごとに締め固め作業を行いながら埋め戻す。そのうえで余盛りの部分を斜面整形で削り取って設計断面に仕上げ、芝生を張る。

 ところが施工者は、上流側のエリアを施工した際、必要な作業ヤードを確保できなかったため、十分な余盛りをしていなかったという。

設計で示された盛り土の施工方法。各層の盛り土を施工する際に十分な余盛りを施し、盛り土と余盛り部分全体を敷きならして締め固めた後、余盛り部分を法面整形で削り取って設計断面に仕上げることになっていた。国土交通省武雄河川事務所の資料を基に日経コンストラクションが作成
設計で示された盛り土の施工方法。各層の盛り土を施工する際に十分な余盛りを施し、盛り土と余盛り部分全体を敷きならして締め固めた後、余盛り部分を法面整形で削り取って設計断面に仕上げることになっていた。国土交通省武雄河川事務所の資料を基に日経コンストラクションが作成
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斜面が崩れた箇所の施工方法のイメージ。施工箇所が狭いことから十分な余盛りをしなかった。このため、締め固めが緩くなり、雨水の浸透による盛り土の緩みを招いた。国土交通省武雄河川事務所の資料を基に日経コンストラクションが作成
斜面が崩れた箇所の施工方法のイメージ。施工箇所が狭いことから十分な余盛りをしなかった。このため、締め固めが緩くなり、雨水の浸透による盛り土の緩みを招いた。国土交通省武雄河川事務所の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 同事務所も、この手順違いを施工過程でチェックできなかった。上流側の施工は巡視対象から外れたからだ。

 「土木工事監督技術基準に基づき、施工状況の把握として、敷きならしや締め固め状況は1工事当たり1回、確認することになっている。同工事では下流側の敷きならしと締め固めを確認したが、上流側は確認していなかった」。武雄河川事務所工務課の泊耕一課長は、このように説明する。

 「施工中は施工者が締め固め度を計測し、完成検査では施工者が実施した締め固め度の結果を確認しているが、結果はいずれも基準値の85%を満たしていた」(泊課長)。そうした状況も、潜在的な不具合を気づきにくいものにしたようだ。

 しかし、変状発生後の表層部の締め固め度は85%を下回っていた。このメカニズムについて、同事務所は次のようにみている。

 (1)盛り土時に十分な余盛りをしなかったため、表層部の締め固めが工事後に緩んだ。(2)変状発生直前の13年6月20日から21日にかけて降った雨水が、既存堤防と施工箇所との境界となる盛り土の上端から浸入して内部に浸透した。(3)盛り土内部が湿潤状態となり、表層部の緩みをさらに促した。