この連載では、日仏友好160周年を機に、パリ市内の近現代建築30件を巡っている。
今回はセーヌ川東寄りの4件と、30選に含まない「おまけ」2件を紹介する。下記のエリアだ。
16.シネマテーク・フランセ(フランク・ゲーリー、1994年)
前回の最後に紹介した「フランス経済・財務省」から南東へ500mほど。フランク・ゲーリー氏の設計で1994年に完成した「シネマテーク・フランセ」がベルシー公園内にある。
竣工時の「アメリカン・センター」という名前に記憶のある方もいるだろう。もともとはアメリカ映画を中心とする芸術文化施設として建設された。竣工時は400席の劇場、多目的ホール、オフィス、ギャラリー、図書館、レストラン、アーティスト用のアパートなどから成る複合施設だった。
運営がうまくいかず、わずか2年後に閉館。長らく使われずにいたが、フランス政府が出資して、2005年にシネマテーク・フランセとして再開業した。
ライムストーンの外壁で、キュビズム(立体派)のような彫刻的外観をつくっている。確かに「ゲーリーらしさ」はあるのだが、後述するゲーリー氏設計の「フォンダシオン・ルイ・ヴィトン」(2014年)を先に見てしまうと、「あれ、この程度?」と思ってしまう。詳細は後日改めて書くが、写真を1枚だけ載せておく。
両方の施設を見るならば、先にシネマテーク・フランセを見ることを薦める。時代順に見ることで、この20年の間にどれだけ3次元の解析技術が進み、ゲーリー氏の発想が飛躍したかが分かるだろう。さらにいうと、日本の神戸にあるフィッシュ・ダンス(1987年)も見ていくと、よりフォンダシオン・ルイ・ヴィトンを見たときの感動が増すだろう。