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日経BP 総合研究所は、林野庁の令和4年度(2022年度)補助事業における中高層・中大規模木造建築物の設計・施工者育成推進のための提案として、木造建築に取り組む実務者に向けて情報を発信している。不動産への独自の認証制度を運営する日本政策投資銀行(DBJ)は、2021年8月に木材利用を評価する仕組みを取り入れ、木造化・木質化を後押ししている。

 木造化・木質化といった建築物への木材利用の価値について、定量的に評価される時代が切り開かれようとしている。先駆けとなったのは、DBJが制度を運営し、日本不動産研究所が評価にあたる「DBJ Green Building認証」。2021年8月、木材利用を新たに加点要素とする制度に改めた。

 改定の狙いは、木材利用の価値を定量的に評価し、建築物における木造化・木質化を後押しすること。DBJアセットファイナンス部調査役の竹村淳氏は「不動産業界にとって半歩先を行くような改定に踏み切り、イノベーションを促したい」と意気込む。

 DBJ Green Building認証は、環境・社会に配慮された不動産を指す、いわゆる「グリーンビルディング」を対象に、DBJが独自に開発した総合スコアリングモデルを用いて5段階の評価ランクで認証するもの。11年4月に運用を始めた。認証物件は「オフィス」「ロジスティクス」「リテール」「レジデンス」の4分野で合計1100件を超える。

 評価項目は大きく分けて、「建物の環境性能」「テナント利用者の快適性」「多様性・周辺環境への配慮」「ステークホルダーとの協働」「危機に対する対応力」の5つからなる。評価の基になる設問数は合計85に上る。申請者の回答を基に300点満点で点数化し、物件の実査とオーナーやアセットマネジャーへのインタビューを経て、結果を判定する。

DBJ Green Building認証の5つの評価軸(出所:日本政策投資銀行)
DBJ Green Building認証の5つの評価軸(出所:日本政策投資銀行)
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 木材利用を加点要素に加えるにあたっては、回答を基に点数化するときの視点に新たな要素を盛り込んだ。その要素とは次の5つだ。

 まず、木材を基準値以上利用しているか、という点。利用量が多いほど、炭素の固定量も多い。「建物の環境性能を問う中で民間主体の先進的な取り組みを評価しようという考え方だ」と、DBJアセットファイナンス部調査役の岩田央氏は説明する。

 基準値は建築物の延べ床面積に対する割合で「0.01m3/m2」と定めている。「木材を利用した建築物での利用量に関する国などの公開情報や有識者の見解を基に、民間事業の後押しとなる水準を意識し、設定した」(岩田氏)という。

 ただし、「環境」と並ぶもう1つの視点である「社会」の観点から、伐採や加工など調達までの間の合法性は確認する。「『クリーンウッド法』に基づく登録木材関連事業者から調達したものであることの証明や、『FSC』や『PEFC』(いずれもCoC:管理・加工段階における認証)など国際水準の認証を受けた木材であることが必要になる」(岩田氏)