全4629文字
PR

ストック改修で木質化が広がる

 とはいえ、中大規模の民間ビルで木材を利用した建築物が登場し始めてからまだ歴史が浅い。現時点では、木材利用を念頭に置いた長期修繕計画の立て方が確立されているとは言い難い状況だ。そのため、「木材の利用にかかる課題を念頭に置き、建物の長期利用に資する適切な維持修繕の内容などが長期修繕計画へと反映される事例の増加を、認証を通じて後押ししていきたい」と岩田氏は説明する。

 これら5つの視点にも表れている通り、DBJ Green Building認証は個別の不動産というハード面を評価するものではあるが、同時に建物オーナーやアセットマネージャーの運営姿勢といったソフト面にも目を向けるのが、最大の特徴だ。

 岩田氏は次のように強調する。「認証制度は『ESG(環境、社会、企業統治)』の総合評価。『E』だけでなく『S』や『G』にも配慮している建物オーナーやアセットマネージャーを含めて総合的に評価する仕組みとしている。環境性能だけの評価では、どうしても新築ビルが有利になる。不動産市場全体の底上げを考える以上、既存ビルも適切に評価していきたい」

 木材利用を加点要素に新たに加えてから約1年半。DBJによれば、認証案件そのものは数多く生まれているが、新たな要素で加点されたものは限られるという。竹村氏は「改定から日が浅いこともあり、評価事例はまだ限られているのが現状。今後に期待したい」と先を見すえる。

 DBJでは認証制度の運営を通して建築物における木造化・木質化を後押しする一方で、その現状と可能性を探る調査も実施している。2022年5月、グループ内のシンクタンクである価値総合研究所と共同でまとめた「建築物の木造・木質化に関する現状と今後の可能性調査」が、それだ。岩田氏は「本業である不動産への投資ではESG投資の観点からどのような不動産を対象とするのがリスク低減につながるのか、見極める必要がある。そこで、炭素固定量や環境配慮の観点から注目を集める木造化・木質化した建築物の将来動向を把握しようと考えた」と、調査に乗り出した狙いを明かす。

 調査結果は、大きく次の3つのテーマに集約される。

 まず「木造・木質化建築物市場の成長可能性」。ここでは鉄骨造や鉄筋コンクリート造に対するコスト増がボトルネックであると指摘する一方、混構造の採用や技術開発の進展によるコスト最適化の動きや、木材利用による炭素貯蔵効果の物件価値評価への反映可能性があることも踏まえ、ボトルネックが解消されれば、不動産価格の上昇が期待できるとみる。

 加えて、不動産価格の上昇は投資家の参入やデベロッパーによる開発の増加につながることから、今後の市場成長が期待できる、と結論付けている。同時に、賃料の上昇が見込めるなら、既存ストックの改修による木質化の拡大も今後は考えられる、と将来性に期待する。

木造・木質化建築物市場の成長可能性(出所:日本政策投資銀行・価値総合研究所「建築物の木造・木質化に関する現状と今後の可能性調査(2022年5月)」)
木造・木質化建築物市場の成長可能性(出所:日本政策投資銀行・価値総合研究所「建築物の木造・木質化に関する現状と今後の可能性調査(2022年5月)」)
[画像のクリックで拡大表示]