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日経BP 総合研究所は、林野庁の令和3年度(2021年度)補助事業における中高層・中大規模木造建築物の設計・施工者育成推進のための提案として、木造建築に取り組む実務者に向けて情報を発信している。清水建設の社宅「アネシス茶屋ヶ坂」(名古屋市)は、木質耐火構造部材やCLT(直交集成板)を用いた木造と、鉄筋コンクリート造の組み合わせによって中層集合住宅として合理的な構造とプランを目指した。

 「アネシス茶屋ヶ坂」は、名古屋市千種区の住宅街に立つ清水建設の社宅だ。幹線道路から少し坂を上った高台の準防火地域に立地する。延べ面積約3200m2、地下1階・地上4階建ての建物に、2LDK(約68m2)の住戸が26戸並んでいる。

「アネシス茶屋ヶ坂」の南西外観。西側が前面道路に接している(写真:車田 保)
「アネシス茶屋ヶ坂」の南西外観。西側が前面道路に接している(写真:車田 保)
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北東外観。少し高台になっている(写真:車田 保)
北東外観。少し高台になっている(写真:車田 保)
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 既存の社宅を建て替えて、2020年7月に完成した。東西方向に約50mの長さを持つ建物は、長辺方向を大きく4つのブロックに分割して周囲の住宅街のボリューム感になじませている。打ち放しコンクリートの壁が立ち上がって各ブロックの境界を示し、窓サッシやバルコニー手すりの黒色が直線を描く。これらが与える硬質な印象を和らげるのが、随所に取り入れた木質材料だ。妻側の外壁を覆う羽目板、バルコニーの軒天井や隔て板に配したスギ材が、視覚的な温かみをもたらす。

妻面をスギ羽目板で覆った入り口まわり。打ち放しコンクリートは木目を残した仕上げ(写真:車田 保)
妻面をスギ羽目板で覆った入り口まわり。打ち放しコンクリートは木目を残した仕上げ(写真:車田 保)
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 コンクリートと木を融合させているのは、外観デザインだけではない。構造や耐火の面でも、大規模な建築の木質化に向けて清水建設が進める様々な技術開発を盛り込んだ。

 「目指したのは、木造と鉄筋コンクリート(RC)造のベストミックスとなるハイブリッド構造。耐火建築物とすることが求められる4階建ての共同住宅を木質化して、中層集合住宅に必要な『安心・安全』『健康・快適性』『環境配慮』といった要素を合理的に実現したいと考えた」。設計を手掛けた清水建設名古屋支店建築設計部グループ長の佐々木喜啓氏はそう話す。

 建物全体の構造体や内外装に約220m3の国産材を使用。大臣認定を取得した木質耐火構造部材やCLTを、RC造の構造体と組み合わせた。