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「その他建築物」で構造材を現しに

 3階建て木造事務所のプロトタイプにするために藤田氏が着目した点は、防耐火設計と構造設計の扱いだ。

 設計当時は建築基準法令上、事務所用途であれば地上3階建てでも高さ13m・軒高9m以下に抑えれば、耐火建築物でも準耐火建築物でもない「その他建築物」として設計できた。つまり、比較的容易に構造材を現しで用いることができた。一方で、構造設計には許容応力度設計を適用できたため、それに準拠した構造計算ソフトを活用できた。

 高さ13m・軒高9m以下という条件を満たせないと、防耐火上は主要構造部を耐火構造とするか、または1時間準耐火構造とし、かつ周囲に幅3m以上の通路を確保することとなる。「構造材を現しで用いることは燃えしろ設計で可能だが、ごつくなるし、コストも跳ね上がる」(藤田氏)。また構造設計では許容応力度等計算が必要なため、建築確認申請の相手先によっては別途、構造計算適合性判定が求められる場合がある。

 このため設計当時の基準からすると、高さ13m・軒高9m以下という条件を満たすことが最優先となった。ただしこの条件は、2019年6月に施行された改正建築基準法では高さ16m・3階以下に緩和されている。

3階会議室。長野県産のカラマツを用いた山形トラスを採用した。スパンは9100mm(写真:浅田 美浩)
3階会議室。長野県産のカラマツを用いた山形トラスを採用した。スパンは9100mm(写真:浅田 美浩)
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 使用木材は原則として一般流通材となる。本社を置く長野県と営業所のある埼玉県、この2カ所の地域材を可能な限り使うことにこだわった。それを自社のプレカット工場で加工し、現場で組み立てる。それによって経済合理性の確保を図ろうとした。

 施工を担当したのは、埼玉県行田市に本社を置く大野建設だ。同社は大工として腕を振るっていた初代が1907年に創業。以降、顧客ニーズに対応する形で一般建築にまで業容を広げてきた。代表取締役は現在、JBN・全国工務店協会の会長職を担う。

 同社では2階建て事務所を木造で建設した場合と鉄骨造で建設した場合のコスト比較をPWAが主催するセミナーテキスト用に実施した経緯がある。そこでは、構造躯(く)体工事費の概算見積もりを比べた結果、木造は鉄骨造より安い、と結論付けていた。

 PWAとの付き合いもあって、今回の建築工事に技術的に対応できる大野建設が加わることになった。建設場所は埼玉県内。同社にとって地元でもある。「施工は地元の工務店に任せようと考えていた」(南部氏)という建築主側の意向にも沿っていた。

階段室。厚さ36mmのCLT(直交集成板)を耐力壁として利用した。壁倍率は2.3(写真:浅田 美浩)
階段室。厚さ36mmのCLT(直交集成板)を耐力壁として利用した。壁倍率は2.3(写真:浅田 美浩)
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