日経BP 総合研究所は、林野庁の令和4年度(2022年度)補助事業における中高層・中大規模木造建築物の設計・施工者育成推進のための提案として、木造建築に取り組む実務者に向けて情報を発信している。鹿島テクニカルセンターは鹿島が手掛けた自社の研修施設。保有林の木を個室ユニットのCLT(直交集成材)や家具に活用し、社員の木への学びを深める。
建設会社の鹿島と山林。一見無縁にも思えるが、グループでは国内に広大な山林を保有する。前身の鹿島組で初代組長に就いた鹿島岩蔵氏が1902年、明治政府から北海道・尺別の土地を借り受けたのが始まりだ。その後、山林事業は軌道に乗り、1940年には社内に山林部を設置するまでに成長。現在、鹿島グループ全体で保有する山林は、北は北海道から南は宮崎県まで約5500haに達するという。
産出した木材は、サプライチェーン(供給網)を通じて、建築用材、製紙用パルプ、木質チップなどに利用してきた。建築用材は戸建て向けが主のため、鹿島自身がサプライチェーンの下流を担う事業者ではあるものの、これらの材を自社で利用することはなかった。
ところが、横浜市鶴見区内に自社の研修施設として「鹿島テクニカルセンター」を建設するにあたり、その一部を自社で活用することを決めた。狙いは何か。社内で建築企画を担当した建築管理本部建築工務部長の加藤昌二氏は次のように説明する。
「この研修施設では、実体験を通じて実務を主体的に学んでもらう方針。自社施設なので、新工法や新技術なども積極的に取り入れ、学びの対象として組み入れた。木については、環境配慮の技術として採用している。一方で、それらが顧客に提案可能な技術か否か、ここで見極めていきたい、とも考えている」
保有林の木をどこにどのように活用したのかを見ていく前に、研修施設としての全体像をまず概観しておこう。