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 日経BP 総合研究所 社会インフララボ、日経アーキテクチュア、日経ホームビルダー、日経不動産マーケット情報が2019年11月7日に開催した「木材活用フォーラム2019 in 大阪」の概要を紹介する。世界で注目される木造の都市型建築。背景には脱炭素社会実現の目標がある。同時に日本では、地域の課題を解決する「地産都消」の視点からも関心が高まっている。

山代 悟 氏
山代 悟 氏
芝浦工業大学 建築学部 教授 ビルディングランドスケープ 代表取締役(写真:生田 将人)

 まちづくりの活動で出雲市を訪れ、古い木造建築群の再利用を、行政や市民と話し合ったことがある。内部に豊かな大空間を抱く木造建築は、大正期の造り酒屋だった。今日、工場や倉庫は鉄骨かRC造が当たり前だ。しかし、戦後間もない頃までは、日本には「木」で大きな空間をつくる歴史があったことに改めて気づいた。

 都市化が進む中で大震災や空襲の経験から、都市の建築は耐火性能や耐震性が重視され、木造は忌避されるようになる。やがて、木で大空間をつくる歴史も忘れ去られてしまった。

 だが現在では、木を構造材に加工する技術や、防火・耐火の研究も進み、再び、木で大きな空間をつくることが可能になっている。鉄とコンクリートでつくられる都市の建築に、今後、どう木材を採り入れることができるのか。そこにどんな未来を実現できるのか。その可能性を考えてみたい。

山代氏が設計し2019年に竣工した「早瀬庵 お茶室」(広島・廿日市)。壁はラジアタパイン150mmLVL、屋根には国産ヒノキ・杉複合90mmCLTを使用。現代的な木造建築の内部に茶室を設えた。この建築はビルの構造形式の原型でもあり、多層化すると中層規模のビルになる(写真:新 良太)
山代氏が設計し2019年に竣工した「早瀬庵 お茶室」(広島・廿日市)。壁はラジアタパイン150mmLVL、屋根には国産ヒノキ・杉複合90mmCLTを使用。現代的な木造建築の内部に茶室を設えた。この建築はビルの構造形式の原型でもあり、多層化すると中層規模のビルになる(写真:新 良太)
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