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 日経BP 総合研究所 社会インフララボは、林野庁の2019年度補助事業において「CLT を含む低層非住宅と中大規模木造建築物の設計・施工者育成推進のための提案」検討委員会を組織し、木造建築に関心のある実務者に向けて情報を発信している。2020年1月10日、Casa di En(神奈川県箱根町)を取材した。意匠設計者と構造設計者の協働で独特の架構を生み出した平屋建て飲食店舗だ。

南側外観。左側の木製建具が玄関ドア。前面道路との間はスロープで行き来する。東から西に向けて下る片流れの屋根形状は、建物内部ではそのまま天井面の形状になっている(写真:浅田 美治)
南側外観。左側の木製建具が玄関ドア。前面道路との間はスロープで行き来する。東から西に向けて下る片流れの屋根形状は、建物内部ではそのまま天井面の形状になっている(写真:浅田 美治)
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 意匠設計者のデザインに対して構造設計者が構造解析で安全性を検証する――。設計者間のそうした関係性が、中大規模の木造建築では変わっていきそうだ。神奈川県箱根町に2019年2月に開業したバンケットハウス「Casa di En」では、意匠設計者と構造設計者の協働で在来軸組工法の空間に一般流通材を用いた波打つような架構を生み出した。

 この建物は、急勾配を行き来する箱根登山ケーブルカーの中強羅駅近く、かつては金融機関の保養所だった傾斜地に立つ。木造平屋建て。周囲の木々に溶け込むような明るい緑青色の外壁には、縦長スリット状の開口が等間隔に並ぶ。

 内部には大小2つの客席とピザ窯のある厨房。結婚式や披露宴をはじめ、各種のパーティーや演奏会など、1日1組限定の催しを、着席なら最大50人まで受け入れる。「Casa」はイタリア語で「家」、「En」は「宴」に由来する。言わば「宴の館」である。

 在来軸組工法の建物ながら、メインの客席空間は7.7m×10.8mの大空間。天井の高さは最高5.4mに達する。一方、傾斜地であることから階段を4段下りた位置にあるサブの客席は、4.7m×5.4mの広さを持つ落ち着きのある空間に仕上がっている。

 目を見張るのは、メイン客席空間の架構だ。

メイン客席空間の正面方向を見る。左右の柱のスパンは6350mm。天井高は最高5.4mに達する。柱・登り梁と方杖の組み合わせが300mmピッチで10.8mにわたって配列されている(写真:浅田 美治)
メイン客席空間の正面方向を見る。左右の柱のスパンは6350mm。天井高は最高5.4mに達する。柱・登り梁と方杖の組み合わせが300mmピッチで10.8mにわたって配列されている(写真:浅田 美治)
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 105mm角の柱が長手方向に300mmピッチで並び、屋根と同じ片流れの天井に沿う登り梁との間を方杖(づえ)がつなぐ。その取り付け角度が1本1本異なるため、天井方向を見上げると、方杖が波打つような動きを見せる。

 天井高5.4mの大きな空間に波打つ角材で表現された曲線の美しさ――。建築主のASTORIA(神奈川県箱根町)で代表取締役社長を務める並木利夫氏はこうした空間の魅力を、「微妙な曲線が角材で表現されているのが、とても気に入った」と、高く評価する。