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予算を踏まえて木造平屋建てに

 並木氏は長年、レストランやホテルの経営に携わってきた実業家だ。これまでの集大成として顧客と価値観を共有できる施設をつくる、という理想の実現に挑戦したという。

建築主であるASTORIA代表取締役社長の並木利夫氏(写真:浅田 美治)
建築主であるASTORIA代表取締役社長の並木利夫氏(写真:浅田 美治)

 「メインはウエディング。バンケットハウスとしておもてなしを提供する。1日1組限定の予約制にして催しのコンセプトを事前にすり合わすことができれば、どのようなおもてなしを提供すればいいのか、明確にできる」(並木氏)

 自然環境が豊かで交通アクセスの良い立地で理想を実現しようと1年間かけて土地を探し、ようやく出合ったのが、この場所だ。ウエディングにしても、この場所までわざわざ足を延ばす人数は限られることから、最大50~60人規模の施設を想定した。

 建物の設計は、互いの親族がイタリアで縁を持つ建築家の團紀彦氏に依頼した。想定する用途や規模を伝えて設計者から示された複数の提案を、予算を踏まえて検討した結果、木造平屋建てのプランを採用することを決めた。

 並木氏は採用を決めた理由をこう話す。「国内外の顧客に対しておもてなしを提供するというこの建物の役割を考えると、やはり日本らしいものがいい。『和』にも『洋』にも合うような、おもてなしの木造建築を目指した」

意匠設計を担当した團紀彦建築設計事務所を率いる團紀彦氏(写真:浅田 美治)
意匠設計を担当した團紀彦建築設計事務所を率いる團紀彦氏(写真:浅田 美治)

 その象徴が、メイン客席空間の架構。建築主側から設計の依頼を受けた團氏と中大規模木造建築の構造設計を手掛ける稲山正弘氏の協働の成果でもある。03年に高知県室戸市内に完成した海洋深層水利用の製塩工場でも、この2人は協働の経験を持つ。

 稲山氏に声をかけた團氏は構造設計者との協働に前向きだ。「構造材として用いる素材によって意匠設計の発想は異なる。木造では鉄筋コンクリート造に比べ、構造設計者の考え方を重視したい。意匠設計者には、それを空間にどう生かすかという発想が求められる」