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CADオペレーターもチームの一員

 加工データの作成に掛かる手間を功刀氏はこう説明する。「通常、30坪の建物ではデータの作成に2日程度が必要になる。この建物はその倍ほどの規模だが、2週間ほど必要だった。規模の違いを考慮すると、およそ3倍の手間が掛かった見当だ」

構造材のプレカット加工を担当したマルダイプレカット事業部の功刀友輔氏(写真:浅田 美治)
構造材のプレカット加工を担当したマルダイプレカット事業部の功刀友輔氏(写真:浅田 美治)

 施工は、並木氏と縁のある山梨県山中湖村の山昭が請け負った。「構造材である柱・梁や方杖は全て現しになる。そこが雨で濡れないように養生を心掛けてくれた」。稲山氏は施工者の気遣いを高く評価する。

 建物の完成は18年6月。意匠設計者と構造設計者それぞれの思いを実現できたのは、チームワークの良さにも起因する。2人の設計者がそうであるように、プレカット工場は稲山氏の、施工者は並木氏の知り合い。稲山氏は「意図を共有できた」と振り返る。

 チームワークの起点には、意匠設計者である團氏の協働意識の高さがある。「構造設計者の能力を生かすも殺すも、意匠設計者の心の持ちよう次第ではないか。自己完結型の設計者では、こうしたコラボレーションは成り立たない」

 プレカット加工のデータ作成を担当したCADオペレーターもこのチームの一員として認められ、その苦労が報われる出来事があったという。

 19年2月、建築主は開業を前にお披露目パーティーを開いた。その場に、通常は建物の完成した姿を見る機会のないCADオペレーターも、建築主側の計らいで招待されたのである。「並木氏が喜ぶ姿を目の当たりにし、オペレーターは感動していた」と功刀氏は言う。

 意匠設計者である團氏は今、中大規模木造建築における構造設計者との新しい関係性に期待を寄せる。「意匠設計者が木造を手掛ける時、そのルールを守ることで手いっぱいになってしまい、構造に関して思考停止に陥る危険がある。しかしそれでは、意匠設計で最も重要なアイデアを十分に生かせない。もっと対等な関係で設計に臨みたい」

東側外観。周囲の木々に溶け込むような明るい緑青色の外壁に、縦長スリット状の開口が等間隔に並ぶ(写真:浅田 美治)
東側外観。周囲の木々に溶け込むような明るい緑青色の外壁に、縦長スリット状の開口が等間隔に並ぶ(写真:浅田 美治)
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配置図・平面図(資料:團紀彦建築設計事務所)
配置図・平面図(資料:團紀彦建築設計事務所)
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断面図(資料:團紀彦建築設計事務所)
断面図(資料:團紀彦建築設計事務所)
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建築概要

  • 所在地:神奈川県箱根町強羅字強羅
  • 用途地域:第1種住居地域
  • 敷地面積:998.98m2
  • 延べ面積:193.619m2
  • 最高高さ:6.298m
  • 構造・階数:木造・平屋建て
  • 用途:飲食店舗
  • 完成:2018年6月
  • 建築主:ASTORIA
  • 意匠設計:團紀彦建築設計事務所
  • 構造設計:ホルツストラ
  • 施工:山昭
  • プレカット:マルダイ
  • 建築工事費:約1億円