日経BP 総合研究所、日経アーキテクチュア、日経クロステックが2022年12月15日に開催した「木材活用フォーラム2022冬」の概要を紹介する。日本の重要な資源である森林の循環利用促進には、木材需要の向上が不可欠。本フォーラムでは木材活用に関する多様な情報を設計・施工者や発注者と共有し、脱炭素やSDGs実現の課題解決を考えた。木造建築はSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)の課題にどのようなインパクトを与えることができるのか。投融資の新潮流を踏まえ解説する(記事内容は2022年12月15日時点)。

本日は、初めに俯瞰(ふかん)的視点から「ESG投融資の潮流と不動産・木造建築の関連性」について、次に「(温暖化ガス排出量を実質ゼロにする)ネットゼロが事業者に与える影響」、最後に「木造建築の普及に向けたインパクトの見える化」の3つの観点で話を進めたい。
日本では2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、国連がサポートする投資イニシアチブ、責任投資原則(PRI)に署名し、2017年にESG指数を活用した投資運用を開始。当初、ESGに配慮した責任投資はリターンが下がると危惧する向きもあったが、実際はリスク管理が奏功し、中長期的には利益が上がるという考え方がESG投資の基本となった。
不動産投資については、欧州の年金基金などにより不動産セクターのESG配慮を測るベンチマーク評価としてGRESBが創設された。建築資材の環境や健康に関する属性の考慮を求めるポリシーが問われるほか、建設時の二酸化炭素(CO2)排出量開示や、入居者・利用者のウェルビーイング(心身の健康や幸福)に貢献する施策などの設問項目がある。
不動産の認証制度の1つに、総合的な環境性能認証を行うDBJグリーンビルディング認証があり、同認証があるオフィスビルは賃料が5~7%高いという分析結果がある。DBJグリーンビルディング認証では、日本の不動産の環境認証制度として初めて、不動産への木材利用を評価する仕組みを導入した。木材は炭素を固定し、他の建築資材と比べ製造や加工に要するエネルギーが少ないことから、ライフサイクルCO2削減に貢献するからだ。こうした評価を通し、ESG投融資への木材活用の反映が期待される。