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 日経BP 総合研究所 社会インフララボ、日経アーキテクチュア、日経ホームビルダー、日経不動産マーケット情報が2020年12月17日に開催した「木材活用フォーラム2020」の概要を紹介する。パネルディスカッションでは、最初に3名のパネリストのプレゼンテーションから始まり、その後、日本、フィンランドの一般消費者を対象とする「木材を使った建築に対する国際意識調査」の調査結果をもとに議論が行われた。

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齋藤 健一 氏
齋藤 健一 氏
林野庁 林政部 木材産業課 木材製品技術室長

齋藤健一氏(以下・齋藤) 日本は世界有数の森林国であり、OECD加盟37カ国では3番目に高い森林率を誇る。1960年代後半は国内の森林蓄積が減少し、66年は19億m3だったが、戦後に杉や檜などの植林が進み、半世紀で人工林は約5倍増となり2017年の森林蓄積は52億m3まで回復した。こうした森林は利用期に達しており、02年には18.8%まで低下していた国産材自給率は、直近の調査では37.8%まで上昇した。

 菅総理は所信表明演説で、2050年までに温室効果ガス排出を全体としてゼロにする目標を掲げた。CO2排出削減とともに吸収源の確保も重要だ。人為でCO2を固定する方法は、森林を造成して木材を利用する以外に有効な技術はまだない。森林はCO2を吸収するとともに、木材として利用することで長期間貯蔵可能になる。

 ただし、人工林の高齢級化が進むと森林吸収量は減少してしまう。「伐って、使って、また植える」森林資源の循環利用のサイクルを確立し、森林の成長の範囲内で利用することで、山を若返らせながら都市を木造化し第2の森とする取り組みが有効だ。その意味からも、都市の中大規模建築物の木材活用を促し、都市木造に適したJAS構造材の安定供給を支援していく。

小林 道和 氏
小林 道和 氏
竹中工務店 木造・木質建築推進本部 営業・プロモーショングループ 部長

小林道和氏(以下・小林) 私は竹中工務店の木材利用、木造・木質建築について紹介したい。これまで当社はコンクリート造、鉄骨造で都市建築に携わってきたが、近年は中大規模木造建築の提案に取り組み、日本の森林問題の解決を都市の木材需要の創出で寄与貢献できないかと取り組んでいる。

 竹中工務店の木造・木質建築推進本部では「木のイノベーションで森とまちの未来をつくる」をスローガンに掲げて中大規模の都市木造に取り組んできた。当社は建設会社なので建築に専念し、建設会社として、森林資源と地域社会の持続可能な自然循環・経済循環の「森林グランドサイクル」の実現に向けて活動している。

 近年は木材利用の理解を深めてもらうために「キノマチプロジェクト」を推進している。まちと森が生かし合う関係が成立した地域社会を実現するために、ともに学びともに行動を起こしていく活動体だ。

坂口 大史 氏
坂口 大史 氏
日本福祉大学 福祉工学科 建築バリアフリー専修

坂口大史氏(以下・坂口) フィンランドでは、古くから森林資源を有効活用しており、20年以上前から中高層建築や商業施設などに木材を多用してきた。木造を環境ツールと捉えて、循環型社会に貢献する環境性の高い材料として評価してきた歴史がある。

 中大規模木造については1990年代から積極的に取り組んでおり、価格競争力や耐火性能など、木造建築ならではの課題を約20年かけて解決し現在に至っている。特に2010年以降の取り組みはユニークで、国は森林全体を持続可能な資源と捉えて、いかに森林資源を有効活用するかという視点からで政策立案を行ってきた。

 最新の政策では、都心だけでなく郊外においても大規模木造を実現すること、大規模な土木利用にも木造を推進、木造関連の法律や基準を再整備してアップグーレード、さらに、国際的な協働と木造建築に関するノウハウの輸出が盛り込まれている。

 注目のプロジェクトとしてウッドシティを紹介したい。林産品や紙製品の製造販売を行う国際企業Stora Ensoが中心となる、ヘルシンキ市南西部の木造街区プロジェクトだ。ヘルシンキから約320キロ北方の工場近郊の森林から木材を伐り出し、LVLを製造して、その後ユニットとして組み立てて現場に運び込む。構工法の開発をStoraEnsoが手がけ、施工方法も開発しマニュアルとしてまとめインターネット上で公開している。さらに耐火設計、音響設計、モジュール接合などの技術資料も公開しており、設計者が木造建築に取り組みやすい環境が整備されている。ウッドシティは森林資源の有効活用の認知度を高め、さらに市場が拡大し利益が循環する流れの中で、木造建築のさらなる普及が促される。