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木造建築は木造住宅の延長

喜多:木造に住宅と非住宅の境目はなくて、大規模な非住宅でも木造住宅の延長にあると思います。納まりはどちらも同じように大切です。高知県は三重県の尾鷲などに匹敵するくらい高温多雨で、日射の遮蔽と雨仕舞は欠かせません。特に雨を漏らさないことに関してはすごくガードをしています。

 また、木は動きます。設計者が、木が動くということを知っているか、知らないかでは大きく違ってくると思います。

:同じ建物を鉄筋コンクリート(RC)造、鉄骨(S)造、木造で設計することを考えたとします。RC造とS造は近いですが、それと同じように木造を設計すると失敗します。木は全く別物です。しかし、木造経験のない設計者は同じ感覚で図面の線を引くのではないでしょうか。

鈴江:そうですね。S造でもRC造でも木造でも、同じ考え方で納まりや形を考えているように感じます。

喜多:変な言い方ですが、住宅で練習しないと、非住宅には挑戦できない。木造住宅を設計することは大いに勉強になります。

:先ほど、CLTでつくったバス停を見てもらいました。完成して約1年半ですが、小口が割れています。クライアントの要望もあり、CLTらしさを視認できるようにあえて小口を見せるデザインにしました。小口に化粧板を張る手立てはあったかもしれません。特に悪影響があるわけではないですが、次の設計では気を付けるつもりです。

CLT長浜バス停待合所(高知市、2017年、建築設計群 無垢)(写真:日経BP総研 社会インフララボ)
CLT長浜バス停待合所(高知市、2017年、建築設計群 無垢)(写真:日経BP総研 社会インフララボ)
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小口が割れてしまったCLT。「化粧板をきれいに張る手立てがあったかも……」(東氏)(写真:日経BP総研 社会インフララボ)
小口が割れてしまったCLT。「化粧板をきれいに張る手立てがあったかも……」(東氏)(写真:日経BP総研 社会インフララボ)
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 ただ、木に慣れていない設計者だと、施工後に発生する木特有の不具合を想像できないと思います。本来なら、割れたり動いたりしたときに備えて余裕をみておくとか、補修時にみすぼらしくならないように工夫しておくとか、などの手当ては必要です。

 バス停の天井のCLTと壁のCLTは、突き付けではなく少しCLTをかき取っています。5mmくらいですが軒のCLTをかき取り、落とし込んでいます。木造の経験のない設計者に、いきなり木造でやれといっても、このようなイメージは湧かないと思います。

長浜バス停待合所の天井のCLTの納まり。突き付けではなく軒のCLTを少しかき取り、落とし込んでいる(写真:建築設計群 無垢)
長浜バス停待合所の天井のCLTの納まり。突き付けではなく軒のCLTを少しかき取り、落とし込んでいる(写真:建築設計群 無垢)
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喜多:やはり知識の蓄積がないと、イメージするのは難しいでしょう。将来的に木が動いて暴れたらどうなるかというのは、知識の引き出しの中からしか出てきませんから。

鈴江:私も若いときに、よく先輩たちから「木が暴れる」と言われました。最初は「暴れる」が何のことか分かりませんでしたが、経験を積んで身に付きました。

 さらに、木は設計が難しいことに加えて、施工も難しい。一般の建設会社だと、今まで木造の経験がないので、施工のノウハウもありません。

喜多:施工についても、まずは数をこなさなければいけないと思います。住宅をたくさん経験すれば、きっと木造の非住宅はできます。

小原:では、木造住宅を手掛けている人は、非住宅にもステージアップできる可能性が高いということですか。

喜多:そう思います。

ST柳町I(高知市、2017年、建築設計群 無垢)。東氏が設計した木造軸組み+CLTによる商業・業務テナントビル(写真:日経BP総研 社会インフララボ)
ST柳町I(高知市、2017年、建築設計群 無垢)。東氏が設計した木造軸組み+CLTによる商業・業務テナントビル(写真:日経BP総研 社会インフララボ)
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