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 日経BP 総合研究所 社会インフララボ、日経アーキテクチュア、日経クロステックが2021年12月9日に開催した「木材活用フォーラム2021・冬」の概要を紹介する。パネリスト4人が、それぞれの木造建築、木材利用に関する報告・発表の後、議論を通して、独自調査の結果から木造建築の需要拡大のヒントを探った(記事内容は2021年12月9日時点)。

坂口 大史 氏
坂口 大史 氏
日本福祉大学 福祉工学科 建築バリアフリー専修 准教授

坂口大史氏 名古屋市の中心部に、複数の木造建築による「名古屋版Wood City」を構想中だ。価格競争力と普及性のある中層木造建築の提案を目指している。最終的には計3棟を開発して街並みをつくり、森と都市をつなぐプロジェクトを目指している。最初の建物は、近隣商業地域/準防⽕地域に4階建てのオフィスを計画している。建物は可能な限り120角・幅の構造材で構築し、都市木造の普及モデルを目指す。既存プレカットラインで対応できるためコスト抑制も可能になる。

 次に、人は「木」を感じ取れるのか。その調査・研究結果を紹介する。成人38人が異なる3つの空間(CLTによる⽊質化率約90%の空間、⽊質化率約50%の空間、⾮⽊質空間)で作業を実施し、ストレス指数、経済性、生産性などを評価する調査・研究を行っている。例えば、ストレス指数の数値を見ると、CLT空間は作業前後でほとんど変化がないが、それ以外では作業前後でストレス指数が上昇していた。木質空間でも、表面仕上げだけの場合と、木の厚みや匂いが感じられるCLT空間では影響の違いが顕著であったことは興味深い。

小林 道和 氏
小林 道和 氏
竹中工務店 木造・木質建築推進本部 部長

小林道和氏 竹中工務店の木造・木質建築として過去のフォーラムでも紹介した「Hulic &New Ginza 8」が2021年10月に竣工した。S造と木造の混合構造12階建ての商業ビルで、2時間耐火の耐火集成材を導入、型枠と兼用したCLTパネルや木を制振装置の構成材料に使うなど、新たな取り組みに挑戦した。

 近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資で木造建築が注目されているが、私は次の視点で考えている。まず、「環境」では、木材による炭素貯蔵、S造などを木造に代えることによるCO2排出量の削減。「社会」では森林グランドサイクルによる持続可能性向上と、木質空間で実現するウェルビーイング。「ガバナンス」では、木材のデューデリジェンスと森林認証制度、クリーンウッド法などの活用。

 特に木材の調達については、持続可能な材料か、生産現場で人権侵害はないかなどの証明が求められるようになる。一方、建設工事時のCO2排出量を削減するツールを自ら作成し、建築物のライフサイクルアセスメントの報告を義務化する大手不動産会社も現れた。木造・木質化でどれほどのCO2が削減できたのか。こうした問いは、ますます広く、深くなると思う。

海老澤 渉 氏
海老澤 渉 氏
三菱地所 関連事業推進室 CLT WOOD PROMOTIONユニット 統括

海老澤渉氏 当社が最初にCLTを導入した施設は沖縄・宮古島の「みやこ下地島空港ターミナル」だ。離島の条件下、木造の採用で高騰するRCの工事費を抑え工期の短縮を狙った。その後も、仙台でコスト低減を目指し10階建ての賃貸マンションをCLTで検討したが、工事費はRCの2倍以上となり、適材適所によるS造+床CLT・CLT耐震壁を採用。「パークウッドオフィス岩本町」では過去の経験を生かし、S造+床CLTでオフィスビルを効率的に開発する設計に挑んだ。ツーバイフォー材によるCLTを使ってコスト低減を実現し、耐火被覆の簡略化にも挑戦している。2021年10月開業の「ザ・ロイヤルパークキャンバス札幌大通公園」ではRC造のホテルの上部3層を木造化した。

 同ホテルでは3~7階の床の施工に新開発の製材型枠を採用した。2020年に当社が設立した総合木材会社MEC Industryの「配筋付き製材型枠MIデッキ」で、従来の配筋付きデッキと木材を組み合わせたもの。型枠の幅はぎ板がそのまま天井の仕上げになる。現状ではCLT造はどうしても高価格になるが、林業、製材、集成材製造のプロセスを統合し最適化することで、設計者が求めるCLTが低コストで製造できると考えた。これがMEC Industryの出発点だ。

土居 隆行 氏
土居 隆行 氏
林野庁 林政部 木材産業課 木材製品技術室長

土居隆行氏 カーボンニュートラル実現には、森林資源の循環利用と人工林の若返りとともに、木材利用の拡大が有効となる。非木造がほとんどを占める中大規模の非住宅建築で木材利用を進めることも重要だ。「公共建築物等木材利用促進法」が2021年に改正され、対象が公共建築物から建築物一般に拡大された。

 こうした中で、幅広い分野の関係者が参画する官民協議会「ウッド・チェンジ協議会」を設立。幅広い団体・企業と関係省庁が参加している。SDGs(持続可能な開発目標)やESG投資も踏まえ関係者間の連携のあり方や見える化の検討、小・中規模木造化モデルの作成・普及に向けた検討などに取り組む。また、建築物に利用した木材の炭素貯蔵量表示に関するガイドラインを作成した。建築物の木材の利用量と炭素貯蔵量の表示、木材利用の意義を表示する例を示すとともに、林野庁のホームページで炭素貯蔵量の計算が簡単にできるExcelシートも公開中だ。