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 日経BP 総合研究所は、林野庁の令和4年度(2022年度)補助事業における中高層・中大規模木造建築物の設計・施工者育成推進のための提案として、木造建築に取り組む実務者に向けて情報を発信している。中高層の賃貸ビルで木造化・木質化に積極的に乗り出す第一生命保険では、どのような考え方で臨んでいるのか。同社不動産部ラインマネジャー・ファシリティマネジメント課長の堀雅木氏に聞いた。

第一生命保険不動産部ラインマネジャー・ファシリティマネジメント課長の堀雅木氏(写真:大久保惠造)
第一生命保険不動産部ラインマネジャー・ファシリティマネジメント課長の堀雅木氏(写真:大久保惠造)

第一生命保険は、この連載でも取り上げた東邦銀行との共同ビルであるTDテラス宇都宮(宇都宮市)を皮切りに、中高層建築物での木造化・木質化に積極的に取り組んでいます。どのような経緯から取り組みを始めることになったのですか。

 木造化・木質化が注目を浴びるようになる中、当社が栃木支社として利用していた地上7階建てビルの老朽化が徐々に進んできました。隣地を所有していた東邦銀行に共同建て替えについて持ち掛けたところ、保有資産を活用し、木造化・木質化によってSDGs(持続可能な開発目標)や健康経営を推進していく開発への姿勢に共感を得られ、共同で木造オフィスビルを建設することが決まりました。

 第2弾は、東京都中央区の京橋で計画中の賃貸オフィスビルです。地上12階建てで延べ床面積は約1万6000m2。主要構造部である柱・梁(はり)の一部に国産材を1000m3程度使用する計画です。近く着工し、2025年以降に完成する予定です。TDテラス宇都宮での経験をここでは存分に生かしていきます。

 当社は全国の主要都市に357棟、合計延べ床面積245万m2の規模で賃貸オフィスビルを展開しています。資産総額は約1兆円です。これらのビルを長期にわたって安定的に運用し高収益を確保していくのが、保険会社としての不動産運用の基本です。中高層建築物での木造化・木質化は強い思いで取り組んでいます。

 木造化・木質化の推進はグループ全体としての取り組みです。不動産会社の相互住宅は、東急田園都市線の青葉台駅近くで地上6階建ての賃貸マンションを建設中です。このマンションは構造材や仕上げ材の一部に、地元の神奈川県産材を中心とする国産材を採用します。2024年1月の完成を見込んでいます。

2022年11月に開業したTDテラス宇都宮。表通りからは、柱や梁の集成材、天井のCLT(直交集成板)といった木材がよく見える(写真:清水建設)
2022年11月に開業したTDテラス宇都宮。表通りからは、柱や梁の集成材、天井のCLT(直交集成板)といった木材がよく見える(写真:清水建設)
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東京都中央区の京橋で近く着工する予定の地上12階建ての賃貸オフィスビル。TDテラス宇都宮と同様、柱や梁の一部や天井に国産材を使用する(出所:第一生命保険・清水建設)
東京都中央区の京橋で近く着工する予定の地上12階建ての賃貸オフィスビル。TDテラス宇都宮と同様、柱や梁の一部や天井に国産材を使用する(出所:第一生命保険・清水建設)
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