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日経BP 総合研究所は、林野庁の令和3年度(2021年度)補助事業における中高層・中大規模木造建築物の設計・施工者育成推進のための提案として、木造建築に取り組む実務者に向けて情報を発信している。「名古屋版WoodCity構想」は、中大規模ビルへの木造建築の普及に向けた部材開発と体制整備の提案だ。

 「名古屋版WoodCity構想」を提唱するのは、日本福祉大学健康科学部福祉工学科准教授でstudio KOIVU一級建築士事務所(名古屋市)の坂口大史氏だ。自身、留学経験のあるフィンランドのヘルシンキ市西部で進む複合開発「WOOD CITY(ウッドシティー)」の名称にならった。この開発は区域内の建物全てで木造化・木質化を図るものとして知られる。

 同様の複合開発を、地元名古屋の副都心とも言われる金山で自ら仕掛ける。場所は、JR・名鉄金山駅南口から歩いて数分の一角。今回の開発対象エリア内にある建物3棟を順次取り壊し、いずれも地上4階建ての耐火木造ビルを建設していく構想だ。

名古屋版WoodCity構想の第一弾、「金山耐火木造ビル」の外観イメージ。道路を隔てた向かいを走るJR東海道本線の車両から、木製ルーバーの建物が目に入る(資料:三四五建築研究所)
名古屋版WoodCity構想の第一弾、「金山耐火木造ビル」の外観イメージ。道路を隔てた向かいを走るJR東海道本線の車両から、木製ルーバーの建物が目に入る(資料:三四五建築研究所)
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 敷地はJR東海道本線や名鉄名古屋本線の線路沿いの一角にある。「ここで外装にも木材を用いた木造ビルを建てれば、車両内からよく見える。『木のある風景』を身近にすることで、木造によるまちづくりに貢献していきたい」。坂口氏は構想の一端を明かす。

 地上4階建ての事務所用途で耐火建築物としなければならないため、外壁はいわゆる木造の耐火建築物に関する告示仕様で仕上げた後、木製ルーバーを施し、木材保護塗料を2回塗りする想定だ。坂口氏は「1棟目でルーバーを設置するのは北面。実験的な試みも兼ねており、木材の小口を守るようにすれば、直接日の当たるほかの方角に比べ腐食や退色の問題は出にくいはず」とみる。

 構想の狙いは、まちづくりへの貢献だけではない。最大の狙いは、中大規模の木造ビルを普及させること。背景には、木造ビルの建設に向けたさまざまな課題がある。

 国産材において、製材業や林業といった「上流工程」では部材供給上の課題を抱える。「一定の需要を見込めないと、伐採しても収益が上がらない。また作業効率の向上を図ろうにも、需要増が一時的なものでは設備投資もおぼつかない。そもそも森林所有者の権利関係が複雑なため、伐採に容易に立ち入れないという課題もある」(坂口氏)

 「下流工程」にも課題がある。建物の発注者側にはいまでも、木造は火災や地震で大きな被害を受けるのではないかという不安が根強い。ほかの構造形式に比べ価格競争力が高くないため、補助金なしには成立しにくいという見方もある。木造の設計・施工に関わる技術者も少なく、特定行政庁にしてみれば不慣れな案件だけに、審査の手間がかかるという点も課題として指摘できる。