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 日経BP 総合研究所 社会インフララボは、林野庁の2019年度補助事業において「CLTを含む低層非住宅と中大規模木造建築物の設計・施工者育成推進のための提案」検討委員会を組織し、木造建築に関心のある実務者に向けて情報を発信している。検討委員による座談会の様子を報告する。

座談会は2020年2月28日に行った。左から山代悟氏、藤田譲氏、腰原幹雄氏、青木哲也氏、稲山正弘氏(写真:浅田 美浩)
座談会は2020年2月28日に行った。左から山代悟氏、藤田譲氏、腰原幹雄氏、青木哲也氏、稲山正弘氏(写真:浅田 美浩)
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小原隆(日経BP 総合研究所 上席研究員):本日の座談会では木造建築に関し、設計者・施工者の実務に役立つ情報を発信したいと考えています。各委員から推薦いただいた木造建築の事例については、既に日経クロステック「木材活用最前線」で紹介しています。最初にこれらについて、推薦者あるいはプロジェクトの関係者としてのコメントをいただければと思います。

マルオカ埼玉営業所。住宅資材の総合商社であるマルオカ(長野市)の営業所として、さいたま市内に2019年5月に建設した木造3階建ての事務所ビル(写真:浅田 美浩)
マルオカ埼玉営業所。住宅資材の総合商社であるマルオカ(長野市)の営業所として、さいたま市内に2019年5月に建設した木造3階建ての事務所ビル(写真:浅田 美浩)
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青木工務店代表で、JBN 中大規模木造委員会 委員長の青木哲也氏(写真:浅田 美浩)
青木工務店代表で、JBN 中大規模木造委員会 委員長の青木哲也氏(写真:浅田 美浩)

小原:まずは「マルオカ埼玉営業所」について。

青木哲也氏(JBN 中大規模木造委員会 委員長):この事務所は、住宅資材の総合商社であるマルオカ(長野市)がさいたま市内に建てた埼玉営業所です。マルオカプレカット事業本部執行役員の南部智隆さんは中大規模木造プレカット技術協会(PWA)の理事、同じく監事の藤田譲さんが設計を担当しました。つまり、普段から顔を合わせている人たちで取り組んだ事例といえます。

 PWAは住宅用プレカット技術を応用して中大規模木造建築を推進している団体です。私もPWAの理事の1人です。

マルオカ埼玉営業所の設計を担当した藤田木造構法計画代表で、中大規模木造プレカット技術協会 監事の藤田譲氏(写真:浅田 美浩)
マルオカ埼玉営業所の設計を担当した藤田木造構法計画代表で、中大規模木造プレカット技術協会 監事の藤田譲氏(写真:浅田 美浩)

藤田譲氏(中大規模木造プレカット技術協会 監事):マルオカ埼玉営業所は、地域の工務店と設計事務所が手がけられるプロトタイプ版をつくろうという視点で取り組みました。設計として特別なことは一切していません。

 最近の木造建築の多くについては、設計者が木造に取り組む際、斬新な試みにチャレンジする傾向があり、作品性が強いように感じます。鉄筋コンクリート(RC)造や鉄骨(S)造で考えると、普通の建築がたくさん建っていて、その中にごくまれに作品性の強い建築があるわけで、ずいぶん違いますね。

マルオカ埼玉営業所の階段室。厚さ36mmのCLT(直交集成板)を耐力壁として利用した(写真:浅田 美浩)
マルオカ埼玉営業所の階段室。厚さ36mmのCLT(直交集成板)を耐力壁として利用した(写真:浅田 美浩)
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山代悟氏(芝浦工業大学 建築学部 教授、ビルディングランドスケープ 代表):プロトタイプというのはおっしゃる通りで、非常に参考になるプロジェクトだと思いました。プレカット技術を使って効率性や汎用性を高めたということですが、現場での省力化の工夫があれば教えてください。今後、建設業において人手不足が深刻化する中、どのような可能性が見込めるか知りたいです。

芝浦工業大学教授で、ビルディングランドスケープ代表の山代悟氏(写真:浅田 美浩)
芝浦工業大学教授で、ビルディングランドスケープ代表の山代悟氏(写真:浅田 美浩)

藤田:いかに省力化していくかということについては、設計段階から検討しました。施工者である大野建設(埼玉県行田市)と、設計者である私と、プレカットも担当している建て主のマルオカの3者が綿密に打ち合わせをして合理的に進めることを心がけました。

 この建物は住宅をベースに設計しています。ただし、中規模木造建築になると、どうしても住宅の経験では対応できない納まりが出てきます。例えば、住宅用とビル用のサッシを併用したり、1階の床を土台より下げたりするなど。そのたびに新たな納まりを考える必要があります。

 そこで、設計段階で建材メーカーとも打ち合わせをしながら、現場で無駄が出ないように納まりを詰めていきました。それも含めて標準化できたのではないかと考えています。

山代:難しかったのはどのようなところですか。

藤田:そうですね。ビル用のサッシは寸法のとらえ方が住宅用とは違うので、窓台やまぐさなど、納まりを原寸図に起こす必要がありました。住宅では標準的な納まりが決まっていることが多く、原寸図を描くことはあまりありません。住宅にはない納まりの場合はどうしても原寸図が必要になります。基本的には、いかに早い段階で原寸図を描くかがポイントになってくると思います。

 例えばCLT(直交集成板)を現しで使っていますが、それも設計図だけでは施工できません。CLTをどう施工して現しにするのか。CLTを加工するための図面をまず作成して、その加工図に基づいてプレカット工場で加工し、次に現場の大工が組み立てるための図面を作成して、どこから張り始めてどこで逃げをとるかといった施工手順を把握しています。簡単にできているようで、かなり大変なのです。

青木:このプロジェクトに関しては、藤田さんは設計者でしたが施工図に近い領域まで仕事をされていましたね(笑)

 3階建てでもあり、軒高9m、最高高さ13mを超えそうになりましたが、そうなると構造計算ではどうしても「ルート1」から外れてきます。一般的な住宅では基礎がある土台の上に床をつくりますが、その高さ分が取られてしまう。ルート1に収めたいと考えると、基礎スラブの上に床をつくることになる。ただ、土台よりも床が下がる状態は、住宅ではあまりない納まりとなり、住宅用の金物が使えないのでオリジナルの金物を製作しました。そういうところはまだ整理できていない部分だと思います。

マルオカ埼玉営業所の3階会議室。長野県産のカラマツを用いた山形トラスを採用した。スパンは9100mm(写真:浅田 美浩)
マルオカ埼玉営業所の3階会議室。長野県産のカラマツを用いた山形トラスを採用した。スパンは9100mm(写真:浅田 美浩)
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マルオカ埼玉営業所の矩計図。軒高は8.98m、最高高さは11.055m。構造計算が「ルート1」で可能な断面構成とした(資料:藤田木造構法計画)
マルオカ埼玉営業所の矩計図。軒高は8.98m、最高高さは11.055m。構造計算が「ルート1」で可能な断面構成とした(資料:藤田木造構法計画)
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稲山正弘氏(東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授):今回は3階建てなので建築確認に構造計算書が必要になります。藤田さんが自ら、市販の住宅用の構造計算ソフトを使って構造計算しました。

 現在、ハードルになっているのは、木造の構造設計者があまりいないことです。これから木造建築を普及させていくには、従来の住宅向けの一貫計算ソフトの延長で使えて、設計図書が作成できることが必要なのではないかと思います。今回、それができたのは、構造計算ソフトにトラスのオプションが搭載されていたからです。

東京大学大学院教授の稲山正弘氏(写真:浅田 美治)
東京大学大学院教授の稲山正弘氏(写真:浅田 美治)

藤田:おそらく今回のレベル(規格化されたトラスのある3階建て)くらいが住宅用の一貫構造計算ソフトでできる範囲ではないかと思います。一貫構造計算ソフトを使えることができれば、構造計算の手間はかなり省けます。

 ルート1についても、「木造軸組工法住宅の許容応力度設計2008年版」(通称:グレー本)に基づくか、そうでないかで手間が大きく変わってきます。グレー本に準拠していると、3階建ての木造住宅の構造計算を普段やっている人が少しがんばればできる。グレー本の準拠から外れてしまうと、立体解析ソフトになり計算のハードルも上がってきます。

 そういう意味では、今回のプロジェクトのあたりが、現在グレー本で準拠できる最大に近いところではないかと思います。