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「やまだ屋おおのファクトリー早瀬庵」について

やまだ屋おおのファクトリー早瀬庵。設計は、山代悟+ビルディングランドスケープ。LVLやCLTといった厚板を多用した(写真:浅田 美浩)
やまだ屋おおのファクトリー早瀬庵。設計は、山代悟+ビルディングランドスケープ。LVLやCLTといった厚板を多用した(写真:浅田 美浩)
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小原:最後の事例として、山代委員が設計を担当した「やまだ屋おおのファクトリー早瀬庵」について。

山代悟氏(芝浦工業大学 建築学部 教授、ビルディングランドスケープ 代表):これは、やまだ屋(広島県廿日市市)という「もみじ饅頭」の老舗の会社が建設したお茶室と手焼き体験コーナーです。立地がロードサイドのため、お茶室にふさわしい人工的な環境(箱)をLVL(単板積層材)とCLTでつくり、その箱の中に数寄屋の茶室を入れました。

やまだ屋おおのファクトリー早瀬庵を設計した芝浦工業大学教授で、ビルディングランドスケープ代表の山代 悟氏(写真:浅田 美浩)
やまだ屋おおのファクトリー早瀬庵を設計した芝浦工業大学教授で、ビルディングランドスケープ代表の山代 悟氏(写真:浅田 美浩)

 壁は、ニュージーランド産のラジアータパインでつくったLVL。地元、廿日市市の木質建材メーカー「ウッドワン」がフィリピンで製造したものです。屋根スラブはヒノキとスギのハイブリッドのCLT。これは隣県の岡山県真庭市の銘建工業が国産の材料でつくっています。

 施工の元請けは五洋建設ですが、CLTやLVLを使って建築する経験が少なかった。今回は銘建工業が、ウッドワンのつくったLVLを加工して施工図も描き、建て方まで担当しました。木造躯体(くたい)工事のサブコンという位置づけです。外側の躯体工事が終わった段階で、数寄屋が施工できる大工たちに入ってもらう。このように、2種類の木工事の担い手が入っています。

稲山:壁をLVLにしたのは、CLTパネル工法を避けようという意図ですか。

山代:特にそれを狙ったわけではないですが、実はそういう利点もあるということに設計の途中で気づきました。

稲山:LVLだと建築基準法施行令46条2項のルート(壁量計算をせず許容応力度計算プラスアルファとし、構造耐力上主要な柱・横架材は、JASの構造用集成材、構造用LVL、JAS製材など)でつくることができますが、CLTにすると、CLTパネル工法の告示の制約を受けることになります。

山代:この建物はいわゆる「その他木造」ですが、準耐火まで考えるとCLTはラミナの構成上、燃えしろとした場合はかなり分厚くなります。LVLだと、実際に燃え込んだ分の厚みで済む。鉛直力を受ける材としては、LVLのほうがふさわしいと考えました。

やまだ屋おおのファクトリー早瀬庵の断面詳細図。壁は鉛直力を受けるのに適したLVLとした。また、屋外木部は、耐候性の面か亜木材保護塗料を含浸させた外装用のLVLで仕上げた(資料:ビルディングランドスケープ)
やまだ屋おおのファクトリー早瀬庵の断面詳細図。壁は鉛直力を受けるのに適したLVLとした。また、屋外木部は、耐候性の面か亜木材保護塗料を含浸させた外装用のLVLで仕上げた(資料:ビルディングランドスケープ)
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青木工務店代表で、JBN 中大規模木造委員会 委員長の青木哲也氏(写真:浅田 美浩)
青木工務店代表で、JBN 中大規模木造委員会 委員長の青木哲也氏(写真:浅田 美浩)

青木哲也氏(JBN 中大規模木造委員会 委員長):施工者目線で言うと、この規模なら地元の工務店でもできますね。木造の非住宅建築を手掛けようとする工務店は増えています。もともとの成り立ちは工務店でも、事業領域が広がって鉄骨(S)造や鉄筋コンクリート(RC)造を手掛けるようになったゼネコン系工務店は、規模の大きなプロジェクトの施工計画作成も含めて比較的参入しやすい。

 技術力のある工務店も実は参入しやすい。標準化を進めて住宅の数をこなすのではなく、どうつくろうかと考えたり、新しい技術を意欲的に研究したがったりする工務店は多いです。規模が大きいと初めての工務店にはちょっとハードルが高くなりますが、延べ面積500m2以下くらいであれば地域の工務店でも十分に対応できます。

腰原:大工にCLTパネルやLVLの厚板パネルをうまく扱ってと言うのは少し無理があります。そこは割り切って、木造でも大工にできない部分はゼネコンがまかなって、細かいところは住宅をやってきた大工にうまく任せられる仕組みができるといいですね。

山代:今回は木造のスケルトン(箱)に木造のインフィルを挿入するプランにしており、新しい木の担い手と伝統的な木の担い手のミックスを意識的にやっています。

やまだ屋おおのファクトリー早瀬庵の壁面は幅1.2mのLVL、天井には幅2.0mのCLTを用い、天井は鉄骨の梁で支える。この構造体のスケルトン内部に、数寄屋の茶室のインフィルを入れた(写真:浅田 美浩)
やまだ屋おおのファクトリー早瀬庵の壁面は幅1.2mのLVL、天井には幅2.0mのCLTを用い、天井は鉄骨の梁で支える。この構造体のスケルトン内部に、数寄屋の茶室のインフィルを入れた(写真:浅田 美浩)
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腰原:木造建築において、誰とどういうチームをつくるのが適切なのかは、そろそろ見えてくるのではないでしょうか。木造を扱う人たちが木工事や大工などの分類ではなく、今までの木造とは異なる職種というか職能を担うべきだと考えます。

 そうでないと、木造を扱っている人に相談に行って、無理やりお願いして力業で何とかやってもらっても長続きしません。繰り返し同じ仕事が依頼されれば改良しようと思うけれど、一度やってみて、面倒くさいからもうやめましょうとなると二度とやりたくなくなる。

小原:大工に嫌がられてしまうと続けにくいということもありますか。

青木:もともと建築大工は1つの現場を責任もってやれと仕込まれているので、分業はあまりなじまないかもしれません。それがいきなりチームの一員、チームのリーダーと言われてもなかなか難しい。ただ、その一方でチームを楽しめる大工もいる。大工の性格や資質に加え、それなりの教育が今後必要になると思います。

稲山:これまで固い話ばかりしてきましたが、この建物は美しいですね。素材の見せ方は非常にそそられます。こういうことができるようになると、建築家たちが木造建築をやってみようと思うのではないでしょうか。

 現しで仕上げた木造躯体や、スチールの斜め格子の梁にCLTを組み合わせたデザインなどは素晴らしいと思います。建築はやはり美しくないといけない。美しいものを標準的なものでつくることがすごく大切です。材料や素材をデザインに生かすことをちゃんと評価した上で、一般化に結び付けた点を私は高く評価したいです。

やまだ屋おおのファクトリー早瀬庵。4連の大型ガラス引き込み戸を開け放つと、屋外と一体的に利用できる。右手に見える壁は幅1200mm、厚さ150mmのLVL。ニュージーランド産のラジアータパインのLVLは節が少なく内装材として適している(写真:浅田 美浩)
やまだ屋おおのファクトリー早瀬庵。4連の大型ガラス引き込み戸を開け放つと、屋外と一体的に利用できる。右手に見える壁は幅1200mm、厚さ150mmのLVL。ニュージーランド産のラジアータパインのLVLは節が少なく内装材として適している(写真:浅田 美浩)
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山代:ありがとうございます。材料の組み合わせを考えたときに、鉛直力を受ける壁はLVLにするのが道理としてあります。本当はもう少し幅広のパネル、せめて2〜2.4mくらいまで、1.2mの倍くらいでつくれるといい。屋根スラブは厚みだけで解決する方法もあるのですが、今回のように鉄骨の小梁と組み合わせるのも1つのモデルになるのではないかと思っています。