木造推進にセメント業界が反発
フィンランドと同様、森林国の日本で木造・木材利用を進めるには、森と都市をつなぐサプライチェーンを堅固にする必要がありますね。
坂口氏:もうひとつ、フィンランドの木材利用について注目すべきトピックを紹介します。政府による木造推進という政策に対して、セメント業界から「自由競争を阻害している」として、15年に訴訟が起こされました。
これは、ヘルシンキ市ホンカスオのWood apartment blockのプロジェクトにおいて、行政が木造に限定したことに対するセメント業界からの反発でした。裁判所の判決では「個々の都市計画はそれを所管する行政に委ねられている」とし、「持続可能でエコロジカルな地区を計画するという視点において、木造の利用が自由競争を侵害しているとはいえない」という見解を示しました。間接的ではありますが、この裁判における判決が、都市における木造推進をさらに後押ししたと考えられます。
さらにフィンランドでは、25年に建築確認申請時のライフサイクルアセスメント(LCA)を義務化する予定です。50年間の耐用年数にわたってLCAの提出が求められます。このことによって、比較的省エネであり、炭素を固定でき、取り壊しから廃棄まで環境負荷の少ない木造を選択することは有利に働くため、今後はより木材利用が図られるようになるでしょう。
日本福祉大学建築バリアフリー専修助教
