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日経BP 総合研究所は、林野庁の令和3年度(2021年度)補助事業における中高層・中大規模木造建築物の設計・施工者育成推進のための提案として、木造建築に取り組む実務者に向けて情報を発信している。「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」は、木造・木質で実績を重ねてきた三菱地所グループが集大成と位置付ける木造ホテルの汎用解だ。

 「国産材活用による持続可能な木材の利用推進」を経営の重要テーマに掲げる三菱地所グループ。同グループではこれまで、みやこ下地島空港ターミナル(沖縄県宮古島市)、賃貸マンション「PARK WOOD 高森」(仙台市泉区)、賃貸オフィスビル「PARK WOOD office iwamotocho」などと、木造・木質の実績を重ねてきた。

 その三菱地所グループが集大成と位置付けるのが、札幌市中央区に2021年10月にオープンしたホテル「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」だ。地上6階までの下層階を鉄筋コンクリート造(RC造)、7・8階をRC造と木造のハイブリッド造、9階から最上階11階までを純木造で構成する立面混構造を採用し、客室内の木質化も図る。使用木材の8割以上は、トドマツやカラマツといった地元北海道産の木材である。

「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」の正面外観(写真:川澄・小林研二写真事務所)
「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」の正面外観(写真:川澄・小林研二写真事務所)
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立面混構造の断面計画(資料:三菱地所設計)
立面混構造の断面計画(資料:三菱地所設計)
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 ロイヤルパークホテルズの中で「キャンバス」というブランドは、ミレニアル世代をターゲットとしたいわゆるライフスタイルホテルとなる。ブランドコンセプトには「MAKE IT HAPPEN」を掲げ、ラウンジ空間を中核にすえる。名称に「ホテル」が含まれていないことに象徴されるように、宿泊以外の価値提供にも重きを置く。

「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」2階ラウンジ(写真:川澄・小林研二写真事務所)
「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」2階ラウンジ(写真:川澄・小林研二写真事務所)
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 全国6カ所に展開する「キャンバス」シリーズのうち「札幌大通公園」のコンセプトは、「北海道を体感する」。1階レストランや2階ラウンジでは北海道産の食材を提供し、道産材を用いた家具を置く。建物も道産材をふんだんに使用しており、その一要素という位置付けだ。三菱地所グループのホテル運営会社であるロイヤルパークホテルズアンドリゾーツがほかの「キャンバス」シリーズ同様、運営にあたる。

 設計は、三菱地所グループの設計事務所である三菱地所設計。2021年4月にはR&D推進部内に木質建築推進室を新設し、木造・木質への対応強化を図っている。

 木造ホテルの設計に取り組むにあたって担当者がまず考えたのは、コストをどこまで抑えられるかという点だ。三菱地所設計建築設計二部・R&D推進部デザイナーの緒方祐磨氏は当時の課題意識をこう明かす。

 「木造化で最大の障壁になるのは経済性。その壁を乗り越えられず断念に追い込まれたプロジェクトは少なくない。しかも、建築主はデベロッパー。収益を上げる必要があるプロジェクトだけに、経済性がなおさら問われた」

 ホテルの木造化は、建築主の三菱地所にとっても設計者の三菱地所設計にとっても初の挑戦となる。経済性の課題はもとより、上下階の音の伝播や木部のメンテナンスなど、木造・木質で避けては通れない課題を、どう乗り越えようとしたのか──。