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 日経BP 総合研究所 社会インフララボ、日経アーキテクチュア、日経ホームビルダー、日経不動産マーケット情報が2021年2月26日に開催した「木材活用フォーラム2021・春」の概要を紹介する。後半では、パネリストのプレゼンテーションの後、7カ国の消費者を対象に実施した「木材を使った建物に対する国際意識調査」の結果についての議論を行った。

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齋藤 健一 氏
齋藤 健一 氏
林野庁 林政部 木材産業課 木材製品技術室長

齋藤健一氏 2050年カーボンニュートラルに向けた木材利用拡大の取り組みとして、現在の日本の森林の状況や地球温暖化対策について説明したい。

 日本は国土の3分の2が森林で、森林率は先進国が中心の経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国で3番目に高い。過去の過度な森林資源の利用で資源が枯渇した時期があるが、直近データでは1960年代後半と比較して、人工林は約5倍まで増えている。森林の地球温暖化抑制効果は周知の通りで、現時点、実証フェーズにあるものとしては、森林を育てる以外にCO2を固定する技術はない。国内で森林を充実させることに加え、「伐って、使って、植える」循環利用で森林の資源を活用し、木製品を使うことも地球温暖化防止に役立つ。

 林野庁では、都市の木造化に向けた取り組みを推進している。8割が木造である低層住宅に加え、非住宅や中高層の建築物での木材利用を拡大することで、森林資源の循環利用、CO2の固定や長期貯蔵等を推進し、2050年のカーボンニュートラル実現へ貢献したい。

小林 道和 氏
小林 道和 氏
竹中工務店 木造・木質建築推進本部 営業・プロモーショングループ 部長

小林道和氏 これまで竹中工務店は、中大規模の木造・木質建築を28例手がけている。直近の竣工例と工事中の事例を紹介する。21年2月竣工の集合住宅「プラウド神田駿河台」は、鉄筋コンクリート(RC)造14階建ての躯体に、耐火集成材燃エンウッドの柱とCLT(直交集成板)の耐震壁、LVL(単板積層材)の耐震壁を採用し、内外装ともに木をふんだんに使い木質感豊かな建物に仕上げた。21年10月竣工予定の銀座8丁目開発計画は、鉄骨(S)造と木造のハイブリッドで、柱梁に耐火集成材を採用し、制震壁にCLTを使用している。

 木造はESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から注目され、SDGs(持続可能な開発目標)実現にも確実に貢献する。銀座8丁目開発計画の建築主ヒューリックは、ESG目標の達成度合いに利率が連動する社債、サステナビリティ・リンク・ボンドを発行し、調達資金の用途の一部に木材利用を掲げている。事業者のこうしたファイナンスの活用が、木材利用の動きをさらに進めると思っている。

坂口 大史 氏
坂口 大史 氏
日本福祉大学 福祉工学科 建築バリアフリー専修 助教

坂口大史氏 英国は森林率が約10%ながら、近年は木造の普及が進んでいる。森林が豊富なフィンランドでは、森と都市をつなぐ政策で、森林利用促進に関する法律やプログラムの整備により、公共建築などの木造化が広がっていった。一方、英国では高騰する住宅市場に対する住宅供給ツールとして、省エネや高断熱・環境対策のためのツールとして、さらに、工期短縮が課題の英国で財政安定・投資先確保のツールとして、木造建築を選択するケースが増えている。

 ロンドンなど都市部では家賃や住宅価格が高騰し、住宅不足も深刻だ。貧困層や低所得者を含め住環境の社会的安定をいかに実現するかが住宅政策の重点課題で、木造は低コスト・短工期で住宅を供給する手段となっている。また、英国では建物のエネルギー性能評価が厳格化され、低水準の建物は売買や賃貸契約ができない。そこで改修と新築に対応する新たな木造の工法として、断熱材をOSB(配向性ストランドボード)で挟んだ木質系建材を用いる工法が、低コストで効果が高い手法として注目されている。

 英国内の工事では約半分で工期遅延があるといわれる。建て主や投資家にとって、工期の遅れは経済的にも大きな問題だ。そこで工期短縮ツールとしても、軽量かつ乾式で施工できる木造が注目されている。英国でも木造の学校建築が増えており、予算執行・管理や教育プログラムの面からも工期の遅れは問題で、学校建築で木造を使うメリットは大きいと考える。