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それぞれの立場から調査結果をどう捉えたか

齋藤氏 「森林資源の循環利用の意義を学ぶ機会の有無」は、残念ながら日本は最も低水準だったが、日本の森林資源は一度枯渇し、その後の育林の期間が長かったことも影響しているのではないか。その間、森林資源を循環利用するイメージが希薄だった。近年は国のアンケート調査でも、森林に期待する働きとして「木材生産」が増えてきた。引き続き、学校・社会教育の中で森林の役割や循環利用について学ぶ機会を増やしていく。

小林氏 木材の価値を正しく理解してもらうには、木を適切に管理して美しい状態で使い続ける取り組みが必要だ。❸の結果で日本の数値が他国より低いのは「天然材か加工材か」「産地」「合法性」だが、これまでの木造建築事業で建築主が注視するのはこの部分だ。これら項目の理解は木の価値認識を高め、木材活用をさらに進めると思う。また、❼の結果を見ると木造・木質建築普及のポイントが浮き彫りになる。「健康に配慮できる」「気候変動対策に役立つ」「SDGsの一環になる」の理解が深い国は、木を使う意識の高さにもつながっている。木材のこうした多様な特長を丁寧に説明していくことも大切だ。また、ネガティブなイメージが低い国は木造の経験値の違いも大きいと思う。木造建築への不安は、建築主や建築家が協力して課題解決することで解消できると考えている。

小原 木材の使い方や材の種類、特性を学ぶ機会が求められているのか。

齋藤氏 戦後、都市の建築物の構造が木造からRC造に切り替わり、設計・施工者の木材や木造に対する知見を看過する状況が長く続いた。

 木材に触れる機会が減る一方で、森林資源の充実で素材に適した太い木が増えている。構造材として木材を使うことも大事だが、普段生活するインテリアを木質化し、板として木材を使うことで、多くの人々に木の良さを実感してもらう環境づくりも重要だ。

坂口氏 原風景としての「木のある空間」をどうつくるか。木造の学校、幼稚園、保育園に注目したい。フィンランドは教育施設に戦略的に木造を導入している。英国も工期短縮のために木造を選択し、結果的に木造校舎が増えているが、先行投資としても大きな意味があると思う。

小林氏 消費者も企業も、直接家計や事業活動につながる施策には注目する。木材を強く経済につなげるカーボンプライシングは無関心層が木材利用に興味を持つきっかけになる。

齋藤氏 身近に木材がない環境で育つと、木に対する愛着や意識は生まれないし、材料への関心は持てない。学校や幼稚園に木材を使う取り組みの意味は大きい。木材や木造に関する規格や法的な整備が進み、利用環境も整ってきた。森林資源の充実で木材製品の供給も増えている。木材活用の意義や方法を設計者・施工者・生活者に発信し、カーボンニュートラル実現の大きな目標に向かって取り組みを進めていきたい。

小原 隆
小原 隆
[モデレーター]日経BP 総合研究所 上席研究員

小原 ぜひ、みなさんにもこの調査を活用いただきたい。本日は貴重なご意見をありがとうございました。