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 日経BP 総合研究所は、林野庁の令和2年度(2020年度)補助事業において「CLTを含む中高層・中大規模木造建築物の設計・施工者育成推進のための提案」として、木造建築に取り組む実務者に向けて情報を発信している。21年3月4日には、もるくす建築社(秋田県大仙市)の新アトリエ(秋田県美郷町)を取材した。同社では、断熱、蓄熱、調湿の役割を持つ積層パネルと縦ログ構法を組み合わせ、「健康的な省エネ建築」を、実験を兼ねて建設。マッシブな木造パネルの断熱・蓄熱性能を、実測を基に検証していく。

南面外観。外壁はスギ板大和張り、屋根は銅板一文字葺(ふ)き。越屋根は排熱の役割を担う(写真:浅田 美浩)
南面外観。外壁はスギ板大和張り、屋根は銅板一文字葺(ふ)き。越屋根は排熱の役割を担う(写真:浅田 美浩)
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 もるくす建築社は木造の戸建て住宅を中心に手掛ける工務店。秋田県大仙市内に置いていたアトリエを、隣町の美郷町内に置いていた木材加工を行う作業場近くに移転・新築した。雪に覆われた田園風景の中、平屋建てのこぢんまりした建物が立つ。

 もるくす建築社の佐藤欣裕代表は、自社のアトリエを設計・施工するにあたって、健康的な省エネ建築を追究する中、伝統的な民家に学び、快適性を確保した持続可能な建築を目指したという。その目標実現に向け、具体的に取り組んだテーマの一つが、非接着のマッシブな木造パネルである。

 このパネルは、105mm角の柱材をパネル状に並べたものと厚さ30mmの間柱材をパネル状に並べ7層重ね合わせた積層パネルで構成する(図1)。柱材の連結・固定や間柱材の積層・固定には、集成材やCLT(直交集成板)で用いるような接着剤ではなく、ボルトやビス、クギを使用。厚さ300mmを超えるマッシブな木造パネルを非接着で生み出している。材種は全て、地域産材であるスギだ。

(図1)外壁の構成。縦ログ構法と積層パネルを組み合わせ、その外は、パネルの隙間をふさぐために木質繊維断熱材を施工し、外装はスギ板大和張りで仕上げた(資料:もるくす建築社)
(図1)外壁の構成。縦ログ構法と積層パネルを組み合わせ、その外は、パネルの隙間をふさぐために木質繊維断熱材を施工し、外装はスギ板大和張りで仕上げた(資料:もるくす建築社)
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南面の軒下。スギ板は意匠上の理由から、胴縁に一定間隔で打ち付けた3寸幅の板材の上に4寸幅の板材を重ね張りしている。いずれもクギ打ちのため、取り換え可能(写真:浅田 美浩)
南面の軒下。スギ板は意匠上の理由から、胴縁に一定間隔で打ち付けた3寸幅の板材の上に4寸幅の板材を重ね張りしている。いずれもクギ打ちのため、取り換え可能(写真:浅田 美浩)
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 柱材をパネル状に並べたものを土台の上に立て、上部に梁を渡す構法は「縦ログ構法」と呼ばれる。構造の考え方は、在来軸組み構法と同じ。パネルの両端にある柱材とその間を埋める柱材が一体になって耐力壁を構成する。105mm角の柱材で構成する945mm×2550mmのパネルでは、壁倍率3.4の大臣認定を取得済みだ。

 ポイントは、小口から隣の柱材に向けて斜めにねじ込むビスにあるという。縦ログ構法を開発した研究会のメンバーである秋田県立大学建築環境システム学科の板垣直行教授は「大工の加工を前提にすると、ボルト用の穴は大きくならざるを得ず、初期剛性を高めようにも限界がある。ビスを併用することで初期剛性を高めた」と解説する。

 この構法はもともと、研究会が応急仮設住宅向けに開発したもの。住宅再建が進み、応急仮設住宅の必要性がなくなれば、パネル状に連結・固定した柱材をばらし、ほかの建物に用いる想定だ。構造性能はもちろん、断熱性能も見込む。そのため、開発時点では性能確保の見込める150mm角のものを想定していたが、ここでは汎用化を狙い、一般流通材である105mm角のものに置き換えた。