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 日経BP 総合研究所は、林野庁の令和2年度(2020年度)補助事業において「CLTを含む中高層・中大規模木造建築物の設計・施工者育成推進のための提案」として、木造建築に取り組む実務者に向けて情報を発信している。21年3月2日、兵庫県尼崎市の「タクマビル新館(研修センター)」を取材した。鉄骨フレームと組み合わせたCLT耐震壁や、集成材で支えるダブルスキンの外皮を実現した地上6階建てのオフィスビルだ。

東から見たタクマビル新館の外観。建物は地上6階建て。2階から6階までの全面を覆うガラスのダブルスキンを、集成材だけで支持している。集成材はすべて現しで使った。建物は、木造と鉄骨造の混構造で、基礎免震を採用している。左に見えるのは、既存の本館(写真:生田 将人)
東から見たタクマビル新館の外観。建物は地上6階建て。2階から6階までの全面を覆うガラスのダブルスキンを、集成材だけで支持している。集成材はすべて現しで使った。建物は、木造と鉄骨造の混構造で、基礎免震を採用している。左に見えるのは、既存の本館(写真:生田 将人)
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 20年10月に竣工した「タクマビル新館(研修センター)」は、中小の工場や事業所、マンションなどの立て込む兵庫県尼崎市の市街地に立つ。ガラスのダブルスキンで建物全体が包まれた地上6階建てのオフィスビルだ。

 地上から眺めると、全面ガラスを透かして木材の格子が縦横に行き交っているのが見える。内外2枚のガラスで構成されたダブルスキンを支える集成材だ。

 水平方向に渡された集成材は、ほぼ1m間隔で地上2階から6階まで架かっている。一方、鉛直方向に立つ集成材は3.2m間隔に並ぶ。北面に9本ある2時間耐火の構造柱以外は、ダブルスキンを支える集成柱のマリオンだ。

 「街から見上げる建物になるので、縦方向よりも横方向の木材を多くしたほうが、木質感が出る。そこで、ガラスを横連窓で割り付けて、その一段一段を水平方向の集成材で受けるつくりにした」。設計を担当した竹中工務店大阪本店設計部設計第4部門設計3グループ長の神田泰宏氏は、木材でダブルスキンを支えるファサードデザインの意図をそう説明する。竹中工務店は、この建物の設計・施工を手掛けた。

 タクマビル新館は、廃棄物処理プラントやバイオマス発電プラントの建設・運営管理などを手掛けるタクマが建てたオフィスビルだ。同社が本社を置く敷地内に、既存の本館に隣接して立つ。

 構造は、木造と鉄骨造の混構造で、基礎免震を採用。地上6階建てで、延べ面積は約3300m2という規模だ。6階建てなので、2時間耐火建築物として建てられている。

 建物内には、事務室や研修室、会議室のほか、全国各地にあるプラントを遠隔監視する「ソリューションラボ」が入る。「近年のプラントの受注増などで、本館が手狭な状態が慢性化していたため、新館を建設することになった。新館の建設は、初めから木をふんだんに使う方針を掲げて進めた」。タクマコーポレート・サービス本部総務部総務課副主幹の辻田直樹氏はそう話す。

2階の北西角にある研修室。写真中央の左側(西面)と右側(北面)とではダブルスキンを支える木材の鉛直材が異なる。西面は集成材のマリオン、北面は2時間耐火集成材「燃エンウッド」で支持している(写真:生田 将人)
2階の北西角にある研修室。写真中央の左側(西面)と右側(北面)とではダブルスキンを支える木材の鉛直材が異なる。西面は集成材のマリオン、北面は2時間耐火集成材「燃エンウッド」で支持している(写真:生田 将人)
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 ボイラー製造を目的に1938年に設立された同社は、戦後の早い時期から木質燃料を使うボイラーの分野も開拓してきた。今で言うバイオマス発電設備だ。2012年、再生可能エネルギーの買い取り制度がスタートしたことで、バイオマス発電の分野に大きな転換期が訪れた。

 にわかに高まったバイオマス発電設備の建設需要で、同社の受注は大きく伸び始め、人材確保にも力を入れるようになった。人材の研修施設や、全国で増えるプラントの遠隔監視拠点の拡充も必要になり、新館の建設に乗り出した。

 そんな同社が深いつながりを持つ地域の一つに、岡山県真庭市がある。豊富な森林資源を生かしたバイオマスを活用したまちづくりに取り組む真庭市で進むバイオマス発電事業に、同社も携わっている。

 また、真庭市を本拠とする国内最大手の集成材メーカー、銘建工業が手掛けるバイオマス発電事業にも設備を納入している。銘建工業と言えば、新しい木質建材であるCLT(直交集成板)の普及をけん引する木材メーカーとしても知られる。

 新館は、木にまつわる同社のそうした取り組みを象徴する建物として計画されたものだ。