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 日経BP 総合研究所は、林野庁の令和2年度(2020年度)補助事業において「CLTを含む中高層・中大規模木造建築物の設計・施工者育成推進のための提案」として、木造建築に取り組む実務者に向けて情報を発信している。2021年1月に使用開始した「土浦北インター自動車学校」(茨城県土浦市)は、延べ面積995m2の平屋建て、4列に並べた切り妻屋根の棟で構成する中規模木造建物だ。登り梁(のぼりばり)と丸構ブレースを組み合わせた張弦梁トラスを用いて、柱のない8.4mスパンの室内空間を生み出した。

土浦北インター自動車学校の南西側外観。外壁の主要部分にカラマツ材を用いた(写真:吉田 誠)
土浦北インター自動車学校の南西側外観。外壁の主要部分にカラマツ材を用いた(写真:吉田 誠)
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 インター・アート・コミッティーズ(IAC、さいたま市)のグループ会社であるIACドライビングスクール(茨城県土浦市)は、茨城県で2校、石川県で1校の自動車教習所を運営している。その一つの土浦北インター自動車学校に木造の新校舎が完成し、21年1月、新しい教室での教習が始まった。

 平屋建ての新校舎は、内外ともに木の質感を前面に打ち出したデザインとなっている。外部は妻面などの外壁にカラマツ材を張り、室内側も柱や梁を露出したうえ、一部の壁を板張りとした。各室と廊下の出入り用に設けた引き戸などの室内建具も木製だ。

 IACの皆川充代表が目指したのは「昔の木造校舎」のような建物だった。「私自身、小学校2年生まで木造校舎を体験しており、木造建築には温かい場所という印象を抱いてきた。自動車学校の教習生は20歳前後の若者が多く、特に2週間程度滞在する合宿教習は青春期において強いインパクトを残す。そこで、ここが第2の故郷だと感じてもらえるような木造建築にしたいと考えた。木で囲まれた気持ち良い室内空間の中で、健康的に過ごしてもらいたいという思いもあった」と、皆川代表は話す。

廊下まわり。柱や梁、床材や引き戸の建具に用いた木が室内空間に温かさをもたらす(写真:吉田 誠)
廊下まわり。柱や梁、床材や引き戸の建具に用いた木が室内空間に温かさをもたらす(写真:吉田 誠)
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 1992年に設立したIACは、合宿免許エージェントとして、全国で提携する約130の自動車教習所に教習生を紹介する事業を展開してきた。5年ほど前から教習所の直営に参入。18年2月に旧霞ヶ浦自動車学校の敷地・建物や経営権を買い取って、翌月から事業を継承した。これが現在の土浦北インター自動車学校だ。

 新校舎には自動車教習を行う大小5つの教室のほか、二輪車用の教室、事務室、食事室などが入っている。設計はかなで建築設計(前橋市)、木材の調達や施工はナイス(横浜市)が担当した。全体計画には、IACグループの建築設計事務所である時空間(さいたま市)も参画している。

1階平面図(資料:かなで建築設計)
1階平面図(資料:かなで建築設計)
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 今後は22年の春から夏あたりの完成をめどに、既存の旧校舎を建て替えて、レストランや合宿所を新設する予定だ。これまでは通学による教習のみを実施していたが、宿泊付きの合宿教習にも対応できるようにすることで、より幅広い教習生を呼び込んでいく。