日本の森林面積は国土面積の約3分の2にあたる約2500万ヘクタールを占める。森林資源は人工林を中心に毎年約7000万m3増加しているが、木材利用の減少によって森林整備が進んでおらず、国土の保全、災害防止などの公益的機能の低減が危惧されている。そこで政府は2017年12月に森林環境税と森林環境譲与税の創設を閣議決定した。これによって、今後自治体がその財源を基に森林整備などの役割を担うこととなる。
日本の国土面積約3780万ヘクタールのうち、森林面積は約2500万ヘクタール。そして、そのうち人工林は約1000万ヘクタールを占める。戦中戦後の過度な伐採によって荒廃した山に国を挙げて木が植えられた結果として、1966年から2017年までの半世紀で人工林資源の蓄積は約6倍となった。
人工林の齢級別面積では、本格的な利用期を迎える1970年以前に植林した木が全体の50%を占めている。
つまり、これまでは木を育てる時代だったが、これからは伐採して利活用する時代に入っている。しかし、社会情勢が目まぐるしく変わっていく中、思うように木造需要が伸びていないという状況が森林環境税(仮称)と森林環境譲与税(仮称)を創設した背景にある。
森林は資源として建築材料などに利用できる。一方で、昨今は地球温暖化や土砂災害の防止、水源の涵養(かんよう)と呼ばれる洪水の緩和、水質浄化などの多面的機能も注目を集めている。2001年の日本学術会議答申「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的機能の評価について」によると、貨幣価値換算ができるものだけでも年間70兆円を超えるという。
森林の多面的な価値を維持するためには、森林がただ増加すればいいわけではない。間伐など、適切な森林整備を行うことで、その機能が担保されているからだ。
もし適切な管理が進まない場合は、災害防止などの機能や、CO2排出の森林吸収源効果が低減する。日本は2013年に開催された「気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)」の場で、2020年度のCO2削減目標を2005年度総排出量比3.8%減と表明しているが、森林吸収源によるものが2.7%以上とその重責を担っている。
土砂災害の防止や土壌保全機能についても懸念がある。昨今の度重なる災害によって、市民の生命や財産への危険はもちろん、復旧・復興のための莫大な行政コストにも憂慮せざるを得なくなる。
それらの複合的な観点から、2017年12月、与党である自民党、公明党の「平成30年度税制改正大綱」では、森林経営管理法の創設を踏まえ、市町村が実施する森林整備などに必要な財源を充てるために「森林環境税(仮称)および森林環境譲与税(仮称)を創設する」と明示した。また、政府もこれを受けて同内容を閣議決定した。その前提として、「自然的条件が悪く、採算ベースに乗らない森林について、市町村自らが管理を行う新たな制度を創設する」とし、森林経営管理法が2019年4月に施行される予定だ。
森林経営管理法は、森林の経営管理の責務を明確化するとともに、その管理ができない所有者から市町村が委託を受けられるようにするものだ。市町村が森林を意欲や能力のある林業経営者に再委託することも可能とし、委託先が見つかるまで、もしくは見つからない場合は、市町村が市町村森林経営管理事業としてそのまま管理する。