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日経BP 総合研究所 社会インフララボ、日経アーキテクチュア、日経クロステックが2022年7月22日に開催した「木材活用フォーラム2022夏」の概要を紹介する。中大規模木造建築が国内外で注目され、関連技術は日進月歩で進化している。注目される理由は地球と地域の2つの「スケール」で捉えることができると山代悟氏は語る(記事内容は2022年7月22日時点)。

山代 悟 氏
山代 悟 氏
芝浦工業大学建築学部 教授 ビルディングランドスケープ代表

 ビルのような多層の建築物や耐火性や安全性に優れる建物を、鉄骨や鉄筋コンクリート(RC)造だけでなく木造でどう実現するか。そうした中大規模木造建築をどのように街中に増やしていくか。これらは多くの関係者が活発に取り組む世界的な課題でもある。

 日本では、今年(2022年)、3時間耐火構造11階建ての木造建築「大林組OYプロジェクトPort Plus」が横浜市に完成した。技術的には実現可能でも、社会は中大規模木造を受け入れてくれるのか、さまざまな懸念はあったと思うが、この竣工は木造建築認知拡大の大きなステップになったと思う。また、民間企業グループが高さ350m、70階建て木造建築実現に必要な技術開発に挑む意欲的なプロジェクト「W350計画」をスタートさせている。

 日本の山林には木々が育ち、国土の約67%が森林に覆われる先進国でも有数の森林国だ。私は島根県の出身だが、県内には古来から出雲大社や松江城など、木で高層を実現し、そこに漆喰(しっくい)や土壁で耐火性を確保した中大規模木造建築があった。

 20世紀前半には「旧常田館製糸場施設 繭倉庫」など、木造による中大規模産業施設が数多く建てられてきた。日本には豊富な森林資源があり、それを活用した中大規模の建築物は枚挙にいとまがない。

 こうした文化はなぜ途絶えたのか。まず、国内で多発する自然災害が理由の1つだ。関東大震災では地震後の火災などで約10万人が死亡・行方不明となり、自然災害ではないが東京大空襲でも大火災で多くの人命が奪われた。戦後復興時には伊勢湾台風などの台風被害に見舞われた。こうした経験から、1959年には日本建築学会の「建築防災に関する決議」により公共的な建築は「木造禁止」となり、中大規模木造の文化は一度途絶えることになる。

 それから50年以上を経て、技術者、建築家、森林に関わる人々のさまざまな努力で、2010年には公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律が施行。2021年には民間の建築にも拡大され、脱炭素社会の実現に資するための建築物等における木材利用の促進に関する法律と法律名が変わり、改めて木造建築が注目されるようになった。