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日経BP 総合研究所 社会インフララボ、日経アーキテクチュア、日経クロステックが2022年7月22日に開催した「木材活用フォーラム2022夏」の概要を紹介する。特別講演後に行われたパネルディスカッションではパネリスト5人による木造建築の「評価」「法改正」などの議論が行われた(記事内容は2022年7月22日時点)。

堀江 隆一 氏
堀江 隆一 氏
CSRデザイン環境投資顧問 代表取締役社長

堀江隆一氏 本日は、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の観点で木材活用を捉えた切り口から話をしたい。投資の考え方は、リスクとリターンの2軸で考えられてきたが、これに対し環境や社会にもたらすポジティブなインパクトを評価軸に加えるESG投資の考え方が広がりつつある。ここで中長期的に踏まえるポイントは、気候変動への対応、健康性・快適性の向上、地域社会・経済への寄与、災害への対応など。いずれも木材活用との親和性が高い。

 例えば、DBJグリーンビルティング認証では、ライフサイクル二酸化炭素(CO2)の削減が期待できる木材利用を加点要素として評価する仕組みを導入した。環境や社会へのインパクトの不動産価値への反映が、ESGや木材活用の拡大には重要と考えている。

海老澤 渉 氏
海老澤 渉 氏
三菱地所 関連事業推進室 CLT WOOD PROMOTIONユニット 統括

海老澤渉氏 三菱地所設計(東京・千代田)での木質化設計業務に加え、20年から、三菱地所などが主に国産材活用ビジネスのため新設したMEC Industry(鹿児島県湧水町)も兼務している。

 2021年10月開業の札幌のホテルでは3~7階の床の施工にMEC Industryが開発した「配筋付き製材型枠MIデッキ」を採用。型枠の幅はぎ板がそのまま天井仕上げになるため、天井工事削減と配筋工事の省力化、ローコストで木質化を実現できる。

 三菱地所グループでは、より多くの方々が木造・木質化にチャレンジしやすい建材の開発・木質化設計の提供を通して、木材活用を推進したいと考えている。

坂口 大史 氏
坂口 大史 氏
日本福祉大学 福祉工学科 建築バリアフリー専修 准教授

坂口大史氏 昨年(2021年)、名古屋に竣工した「タマディック名古屋ビル」は坂茂氏の設計によるオフィスビルだ。構造は鉄筋コンクリート(RC)造で、コンクリート型枠にCLT(直交集成板)を用い存置して木質化している。出社すると木の香りで気分が上がるという声もあり、社員が出社したくなるオフィスを木で実現した。

 木造・木質化には環境性能や環境負荷軽減のメリットだけでなく、木の空間で過ごす人々が満足する仕組みをどう実現するかも大切だ。木の空間で実現したい価値をゴールに設定することが大事で、木材利活用は手段であり目的ではない。

土居 隆行 氏
土居 隆行 氏
林野庁 林政部 木材産業課 木材製品技術室長

土居隆行氏 日本の森林蓄積の推移を見ると毎年約6000万m3増加している。木材の国内生産量は約3000万m3なので成長の範囲内で木材生産が行われ、環境を維持しつつ経済にも貢献できる条件が整っている。国産材の需要拡大は地球温暖化防止やカーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)の観点からも重要だ。京都議定書の第1約束期間では森林から伐採搬出された時点で排出とみなされてきたが、第2約束期間以降は伐採後に木材製品として利用する期間は「伐採木材製品(HWP)炭素プール」に加えられ「吸収」として計上されることになった。国産材を建築などに活用する場合にこのような取り扱いとなる。

(資料:林野庁)
(資料:林野庁)
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