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木造ビルで木材需要を増やす

まず需要を高めることが先決だということですね。

 地方における造林、製材、運搬といった生産側の課題克服だけでは、林業を巡る問題は解決できません。木を使う側、つまり需要側の問題でもあるのです。これまでのように戸建て住宅に国産材の需要を頼るだけでは限界があることは明らかです。

 国でもこうした状況を踏まえて、10年に公共建築物等木材利用促進法を制定し、学校や庁舎の建物などで木材利用を促進してきました。ただし、それだけでは需要喚起のさらなる高まりに期待できません。都市において活発に経済活動を行っている民間事業者は大量にビルを建てており、こうしたビルの建築に木材を使うことで、飛躍的に木材の需要を増やすことが可能になります。

 都市で木材の需要をつくり出せば、地方で林業が復活することにつながり、手入れされた山林は里山の保全にもつながります。すると、農業が元気にもなる。河川を介した流域ということで捉えると、遠く海で行われる漁業も豊かになるでしょう。また、適切な保全で山の景観がよくなれば、観光の振興にもつながる。つまり、地方に若い人の働く場がたくさん生み出されることになる。これが地方創生の目指す姿です。

隅さんの話を聞いた経営者の反応はいかがでしょうか。

 現在も機会あるごとに、様々な経営者に木造建築の普及について呼びかけています。先日、ある地方の会合を、新型コロナ禍のなかですからオンラインで行いました。地域の経営者が多数参加されており、「木造でビルをつくる」ことについて話させていただきました。

 そもそも民間の事業者や経営者は、木材でビルを建てられるなんて考えたことはないでしょうね。「木材は弱い」「燃えやすい」「耐久性に劣る」「地震国の日本で木造ビルなんて」という反応です。

 私も最初は同じでした。ただ、木材や木造について新しい知見や正しい情報を勉強することで、それは誤解だと気づかされました。強度、燃焼、耐久性などについても、木という素材を知り、適切な配慮を行えば、中高層ビルを建てることも十分可能であることを知りました。

 「鉄筋コンクリート造にも劣らない耐震性を実現できます」「日本の山を守るためにビルを木でつくりましょう」という話をすると、「目からうろこが落ちた」と言ってもらえます。

木造ビルに対する風向きが変わり始めていると感じますか。

 実は私の話に共感し、木造ビルにチャレンジしてくれた経営者がいます。ヒューリックの西浦三郎代表取締役会長です。銀座で計画していた鉄骨造の建物を設計変更して、木造と鉄骨造のハイブリッド構造となる12階建てビルを建てる決断をしてくれました。銀座通りに面したビルで、完成は21年の秋ごろと聞いています。銀座の目抜き通りに建ち、多くの人の目に触れることで、木造ビルの普及に一役買ってくれるものと期待しています。

 このように、木造ビルの普及期の現在は発注者側の常識を覆すことに最大限の注力をすべきだと考えます。最近では木造ビルに関し、三菱地所が仙台市に10階建てのマンションを建てたり、三井不動産が東京・日本橋で17階建てのオフィスビルを計画したりしているというニュースが話題になっています。このような実績を積み上げていくことが大切です。

東京・銀座通りに建設中の「銀座8丁目開発計画(仮称)」の完成予想パース。地上12階建て、高さ約56m、延べ面積2451m<sup>2</sup>の商業テナントビル。発注者はヒューリック、設計・施工者は竹中工務店、デザイン監修者は隈研吾建築都市設計事務所(資料:ヒューリック)
東京・銀座通りに建設中の「銀座8丁目開発計画(仮称)」の完成予想パース。地上12階建て、高さ約56m、延べ面積2451m2の商業テナントビル。発注者はヒューリック、設計・施工者は竹中工務店、デザイン監修者は隈研吾建築都市設計事務所(資料:ヒューリック)
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東京・日本橋本町1丁目に計画している地上17階建て、高さ70m、延べ面積約2万6000m<sup>2</sup>の賃貸オフィスビルの完成予想パース。2023年に着工し、25年に完成する予定。発注者は三井不動産、設計予定者は竹中工務店(資料:三井不動産)
東京・日本橋本町1丁目に計画している地上17階建て、高さ70m、延べ面積約2万6000m2の賃貸オフィスビルの完成予想パース。2023年に着工し、25年に完成する予定。発注者は三井不動産、設計予定者は竹中工務店(資料:三井不動産)
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