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地方と都市が一緒に元気になる

ビルの発注者にとって、木造は建設コストが高くなるのではないかと気になります。

 基礎工事が大規模にならず工期が短くなるなどの利点はあるものの、まだ木材の需要が小さいため、木造でつくるコストはいまのところ鉄筋コンクリート造などに比べると高い。木材の供給側のサプライチェーンが貧弱なこともコスト高になる理由でしょう。林野庁や国土交通省はこれまでも木造・木質建築に関する補助事業を設けて、後押しをしてくれています。こうした支援を手厚くするとともに使い勝手よく継続してくれることを願いたいです。

 都市においてビルを木でつくることが当たり前になれば、例えば現在は限られた数しかない国内のCLT工場にも投資が進み、サプライチェーンが確立し、それによって価格も低廉になり、他の構造形式とコストで競えるようになるはずです。いつまでも支援してくれと言うつもりはありませんが、環境が整うまでは補助金は助けになると思います。

 24年度から本格的に始まる森林環境税にも期待しています。森林環境税を自治体に配分する森林環境譲与税はすでに19年度から始まっていますが、段階的に引き上げられて約600億円の規模になると聞いています。その貴重な財源は森林の整備や林業従事者の人材育成などだけでなく、例えば都市部の木造ビルなど需要側の底上げにも活用していくアイデアを考えてもらいたいですね。

経済や社会において、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)への関心が高まっています。木造ビルはどのように貢献できますか。

 理屈抜きで、木で囲まれた空間はホッとします。癒やされます。ESGもそうですが、サステナブルな社会をつくっていくこと、まさにSDGsはこれからの経済を展開するうえでの大きな軸だと考えています。

 地方を元気にすることが重要です。地方が疲弊し、衰退してはサステナブルな社会を維持できません。地方を支える一つの要素として林業があり、それを経済界が支えることでSDGsを進めることにつながります。

 新型コロナの感染で私たちが知らしめられたことは、大都市への行きすぎた一極集中ではまずいということではないでしょうか。今後はテレワークはもちろんのこと、遠隔でも高度な教育や医療が可能になる。伸びやかな暮らしが実現できる地方に、人や企業も少なからず向かうことになるはずです。これからの時代は、地方と都市が一緒に元気になることが求められると思います。

隅修三(すみ・しゅうぞう) 東京海上日動火災保険相談役
隅修三(すみ・しゅうぞう) 東京海上日動火災保険相談役
1947年山口県生まれ、早稲田大学理工学部卒業。東京海上火災保険入社、2007年、東京海上日動火災保険取締役社長、2016年から同社相談役。経済同友会副幹事を経て日本経済団体連合会副会長(写真:大久保 惠造)