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福島県内の工場と連携し地域産材を活用

 幸い福島県内では、郡山市に拠点を置く藤寿産業と浪江町に拠点を置くウッドコアの2社が、集成材の製造・加工を手掛けている。ウッドコアは東日本大震災からの復興に向けた国家プロジェクトである福島イノベーション・コースト構想に基づき開設された福島高度集成材製造センターを運営する会社だ。

 スリム耐火ウッドは先ほど紹介したように、芯材、燃え止まり層、化粧材からなる3層構造。芯材は南会津のカラマツを、化粧材は八溝山系のスギを用いた。藤寿産業がこれらの木材を調達・加工し、ウッドコアが芯材の上に燃え止まり層を構築した後、化粧材を張り合わせることで、耐火集成材として仕上げた。

 一方、CLTパネルの製造は、圏域に対応可能な工場がないため、愛媛県西条市に拠点を置くサイプレス・スナダヤとも手を組んだ。藤寿産業がラミナの加工を受け持ち、それを西条の工場に持ち込み、サイプレス・スナダヤがCLTのマザーボードに仕上げる、という流れ。マザーボードは再び郡山の工場に戻し、藤寿産業がラグスクリューボルトの組み込みを含むCLTパネルへの加工を施した。

 木材は通常、調達した材積分をまるまる利用できるわけではなく、加工を伴うこともあり、一定の歩留まりを持つ。TDテラス宇都宮の場合、サーキュラーエコノミー(循環経済)の観点から、通常は建物に利用しない端材や木粉を、一部ではあるものの活用を試みた。端材は、例えば階段手すりの笠木や各種サインなどに、木粉は、2~4階トイレの壁面仕上げに塗料に混ぜる形で利用している。

階段手すりの笠木は、CLTパネルの端材を用いた。また2~4階トイレでは写真正面に見えるように、壁面仕上げに木粉を混ぜた塗料を用いた(写真:清水建設)
階段手すりの笠木は、CLTパネルの端材を用いた。また2~4階トイレでは写真正面に見えるように、壁面仕上げに木粉を混ぜた塗料を用いた(写真:清水建設)
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 屋外では、内外の連続性を感じさせる狙いもあり、CLTパネルの天井面につながる軒天にもCLTパネルを用いる。軽量鉄骨の下地に厚さ36mmのパネルを取り付けるディテールだ。さらに幕板にも木材を利用し、着色で仕上げた。

 木部は原則、軒天や幕板での利用にとどめた。加治屋氏は「過去の事例を調べると、日差しや雨水の影響を受けやすい床面や法面ではダメージを受けていることが分かった。そこで、屋外で木部を露出させる面を限定した」と、その理由を説く。