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先行き不透明な輸入材から安定の国産材へ

 いきおい、ウッドショックの直撃を受けざるを得ない。「輸入材を確保できず、国産材で対応しようとしたが、ツーバイフォー工法向け木材の供給網を整えていなかったため、十分な対応を取れなかった」(林氏)

 グローバルな供給網の中から調達する輸入材は国際情勢の影響を受けやすい。資源安全保障の観点から、輸入材依存は好ましくない。VUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代といわれる中、今後も同様の事態に見舞われる恐れは捨てきれない。

 協和木材営業本部・企画部本部長の新納徹洋氏は「欧米の針葉樹森林資源は地球温暖化を背景とする山火事や虫害で減少傾向にあり、現地の行政機関は伐採可能量を大幅に削減している」と指摘する。今後、輸入材を確保しづらくなるリスクの芽はすでに、目に見える形で表れている。

 視点を変えれば、2050年カーボンニュートラルの実現という政府目標との関係性も気掛かりという。「船舶での輸入には、大量のCO2排出を伴う。そうした資材調達を今後、これまでと同様に続けていていいのか、という問題意識も抱えている」。林氏は胸の内をこう明かす。

 一方、国産材には輸入材と比べて3つの安定性がある、と新納氏は説く。「輸入材頼みの現状から脱却を図るべき理由は、国産材が安定性の観点で相対的に優れているからでもある」

 安定性の1つは、品質。木材の乾燥技術が際立って進展し、かつ丁寧な仕上げによって反りや狂いの問題が少なくなり、安定性が高くなったという。

 さらに、価格。ウッドショックであらわになったように、輸入材価格の変動は振れ幅が大きいのに対し、国産材はそれに比べ安定しているという。

 最後は、納期だ。「欧州産のホワイトウッドはコンテナ船の不足で輸入が困難だった時期もあるが、国産材ならそうした事態は起こり得ず、納期の優位性は極めて高い」(新納氏)

 こうした状況から、ツーバイフォー建築での国産材の利用はわずかながら進みつつある。協議会が実施した「ツーバイフォー工法における国産構造用製材の需給調査報告」によれば、国産材からの生産量は2021年度実績で7万6257m3だったが、2022年度見込みでは9万4080m3、23.4%増えている。またツーバイフォー建築事業者のうち「国産材利用実績あり」と回答した事業者は2021年度実績の35社から2022年度見込みで53社にまで増えている。

国産枠組壁工法構造用製材の生産量。JAS認証工場22社の集計(資料:ツーバイフォー建築における国産木材活用協議会「ツーバイフォー工法における国産構造用製材の需給調査報告」)
国産枠組壁工法構造用製材の生産量。JAS認証工場22社の集計(資料:ツーバイフォー建築における国産木材活用協議会「ツーバイフォー工法における国産構造用製材の需給調査報告」)
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国産枠組壁工法構造用製材の需給動向。日本ツーバイフォー建築協会1種正会員76社集計(資料:ツーバイフォー建築における国産木材活用協議会「ツーバイフォー工法における国産構造用製材の需給調査報告」)
国産枠組壁工法構造用製材の需給動向。日本ツーバイフォー建築協会1種正会員76社集計(資料:ツーバイフォー建築における国産木材活用協議会「ツーバイフォー工法における国産構造用製材の需給調査報告」)
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