川下で需要を創出し川中の設備投資を促す
ただ全体から見れば、国産材の利用はまだまだ限られているのが実情だ。「現状では国産材だけでツーバイフォー建築をつくることは難しい」(林氏)からだ。
建築用の国産材には、スギ、ヒノキ、トドマツ、カラマツなどがある。なかでもスギは、戦後間もない時期に多く植林され、いま伐期を迎えているだけに、活用すべき国産材の主役ともいえる。ところがツーバイフォー建築では、利用できる部位が限られる。
「スギは縦枠材では十分利用できるが、強度上、横架材では難しい場合がある。一方、ヒノキ、トドマツ、カラマツなら、横架材にも利用できるが、供給量がスギに比べ限られる」。新納氏は、国産材の活用に向けた課題の1つを指摘する。
またツーバイフォー建築では、「横架材には210材(ツー・バイ・テン材、38mm×235mm)といった大きな断面の長さ16フィート(約4.9m)や、上枠下枠などに使用する同20フィート(約6.1m)などの長尺物も利用する。このような部材向けに、無垢(むく)材を長さ方向に接着した『たて継ぎ材』への製材・加工が可能な広さや設備を持つ製材工場が、国内ではまだ限られる」と、林氏はもう1つの課題を挙げる。
さらに建築基準法令上、構造にはツーバイフォーのJAS(日本農林規格)認証工場で製材・格付けした規格品の構造材を使わなければならない。ところが日本ツーバイフォー建築協会(以下、協会)の資料によれば、認証工場は2022年10月現在、全国31カ所にすぎない。
こうした課題を乗り越え、ツーバイフォー工法向け国産材を安定供給する供給網を構築していくうえでまず必要になるのが、長期・安定的な需要の創出と国産材のツーバイフォー建築向け製材・加工を念頭に置いた設備投資だ。
需要創出には追い風も吹く。住宅着工統計によれば、住宅の新設着工戸数は1990年代後半から減少傾向にあるが、その傾向を協会の資料を基にツーバイフォー工法、在来軸組工法、プレハブ工法、と工法別にひもとくと、ツーバイフォーのみ、2016年度までは増加傾向を示していることが分かる。「需要増は今後も見込まれる」と、林氏はみる。
協議会ではこうしたツーバイフォー建築で輸入材からの置き換えを図るほか、中大規模建築での国産材活用も視野に入れる。一例が、三井ホームが設計・施工を手掛ける木造マンション「MOCXION(モクシオン)」である。同社は2021年11月、第1弾を東京都稲城市内に完成させたのに続き、2022年には東京都新宿区や同大田区などでも着工した。中大規模建築で鉄筋コンクリート造や鉄骨造からの置き換えを狙う。