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横架材に利用可能なスギのたて継ぎ材開発

 中大規模建築をにらむと、建設会社の利用も見込める部材開発が欠かせない。そこで必要になるのが、「フィンガージョイント材」とも呼ばれるたて継ぎ材である。

 ツーバイフォー工法では一般に無垢材を利用することから、反りや狂いが少なく、構造計算が可能な集成材を好む建設会社にはなじまなかった。「しかし、たて継ぎ材なら、集成材のように反りや狂いが少なく、構造計算が可能。建設会社の利用が見込める。スギであっても、機械等級区分を前提に強度の高いたて継ぎ材を開発すれば、横架材への利用にも可能性が開ける見通しだ」。新納氏はそう期待を寄せる。

 建築事業者側で長期・安定の需要を創出し、その将来見通しを示せれば、製材事業者側にたて継ぎ材への製材・加工を可能とする設備への投資を促すことにつながる。ツーバイフォー工法向け国産材の供給網構築は、そこから始まる。

 協議会ではさらに、供給網の構築に向けJAS改正の検討も要望していく方針だ。三井ホームや協和木材と同じ代表理事会社の1社である三菱地所住宅加工センターで開発部第二グループ部長を務める田中暁氏は、「製材工場におけるJAS認証取得のハードルを下げ、JAS規格製材品がより生産・流通しやすくなるよう、国や審査・認証機関に働き掛けていく」と、意欲を見せる。

 協議会の2022年度の事業内容は、(1)ツーバイフォー工法建築物に活用する国産木材に関する需給動向調査及び調査結果の公表・提言(2)国産木材活用推進のための情報収集、普及啓発活動(3)国産木材供給のサプライチェーンの整備、支援、提言(4)国産木材の製品規格の標準化(5)国産木材に関する法令・規格の調査、研究及び提言(6)川上から川下において国産木材を利用した建築物における炭素貯蔵量・炭素排出量・炭素吸収量等の算定手法の策定──という6項目。各項目でワーキンググループを組織し、具体的な検討を進めている。

 国内における国産材活用の動きは、川下での長期・安定の需要創出から、それを足掛かりとする持続可能な供給網の構築へ、新たなフェーズに移行しつつある。