前回は、1990年代のインターネットが抱える課題をひも解き、現在のブロックチェーンの課題を考えた。具体的な課題には「スケーラビリティ」「プライバシー」「セキュリティー」「ガバナンス」「標準化」の5つがある。今回は、このうちスケーラビリティの課題解決に向けた対策のポイントを解説しよう。
スケーラビリティの課題とは、ブロックチェーン上のトランザクション処理に関する性能問題だ。この課題は、現在最も取り組みが盛んな分野と言える。
そもそもブロックチェーンは、ネットワークを流れてきたトランザクションを、あたかも「バケツ」に入れて処理するようなものだ。このときトランザクションをまとめる単位が「ブロック」である。ブロックの大きさはいわばバケツの大きさ。一度に大量のトランザクションが届くと、小さなバケツでは入りきれない問題が出る。
この問題を解決する上では、大きく2つのジレンマに直面する。
まず、ブロックチェーンはトランザクションを検証する際に、特定のプレーヤーだけを信頼して一任することはない。ネットワークに参加する全員が台帳(取引履歴)の複製を持ち検証する仕組みを取っている。みんなでトランザクションを検証して不正を抑止するわけだが、これが逆にジレンマとなる。
というのも、みんなが同じ台帳の複製を持って検証するので、参加者が増えれば増えるほど単純に台帳の複製も増える。そのためトランザクションの検証に負荷がかかり、処理速度が一向に上がらない問題が生じてしまう。これが1つ目のジレンマである。
一方、大量のトランザクションをさばくには「バケツ」を大きくすればよいと考えるかもしれない。だが、その場合は大きなバケツを使える特定プレーヤーだけに権力が集中してしまうジレンマに直面する。