世の中の予測は間違いだらけ──。100年、いや130年に1度の変革期を迎えたと言われる自動車業界。自動車業界の将来予測は花盛りだ。ところが、「なぜそう予測できるのか、根拠が薄いものが実に多い」と指摘するのが、元トヨタ自動車の技術者で愛知工業大学工学部客員教授の藤村俊夫氏である。自動車を知り尽くす同氏が、技術的な根拠を基に次世代車の導入優先順位を予測する。

当然だが、技術的な実力やコストなどを知らずに、自動車の将来を予測することはできない。
現在のエンジン車を含め、現在市販されているハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、レンジエクステンダー(RE)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)の販売価格、車両重量(質量)、航続距離を比較したものが図7だ。
HEVとPHEVはエンジン車に比べて航続距離が長く、次世代車の「現実解」と考えられる。一方で、EVは、ガソリン車と同等の航続距離を確保すべくバッテリーの搭載容量を増やすと、車両重量は1.6倍に、価格は2.8倍程度に跳ね上がることが分かる。
また、PHEVとEVを比較すると、同質量で同コストであるにもかかわらず、EVの航続距離はPHEVのわずか1/5と短い。
これを踏まえると、EVはテールパイプからのエミッションがゼロで排出ガスがクリーンというメリットが大気汚染の緩和に生きる都市部で、短距離輸送の小型商用車などに限定されると考えるのが自然だ。再生可能エネルギー発電への早期移行は言うまでもない。
なお、FCVについてはコスト削減と大幅な軽量化が大きな課題であり、将来は燃料である水素価格の低減とセットで、長距離輸送トラックやバスでの活用が有効になると考えられる。