
大手電機メーカーの宇宙事業への新規参入が相次いでいる。ソニーやキヤノン電子がその代表だ。三菱電機やNECなどの老舗企業も衛星工場に投資したり、新規事業を始めたりしている。各社が宇宙事業に新しい可能性を感じるようになっているのは、多数の小型衛星が連携する「衛星コンステレーション」が普及するとみるためだ。今後、需要が拡大する見込みの衛星写真などの衛星データの取得を容易にし、安価にする。衛星機器の需要も押し上げる。本特集では、大手電機メーカーなどによる宇宙事業への取り組みを紹介する。
大手電機メーカーの宇宙事業への新規参入が相次いでいる。ソニーやキヤノン電子がその代表だ。三菱電機やNECなどの老舗企業も衛星工場に投資したり、新規事業を始めたりしている。各社が宇宙事業に新しい可能性を感じるようになっているのは、多数の小型衛星が連携する「衛星コンステレーション」が普及するとみるためだ。今後、需要が拡大する見込みの衛星写真などの衛星データの取得を容易にし、安価にする。衛星機器の需要も押し上げる。本特集では、大手電機メーカーなどによる宇宙事業への取り組みを紹介する。
最近の海外の衛星関連ビジネスの動向について、日本で宇宙関連事業のコンサルティングを手掛けるサテライト・ビジネス・ネットワークの葛岡成樹氏に聞いた。同氏は日本企業と欧米企業、両者の宇宙関連事業に携わってきた。
将来、宇宙空間で多くの人が長期間生活するようになれば、地上から持ち込む食料だけで賄うことは難しい。そこで宇宙で主食となる農作物を栽培する。このような研究にパナソニックが取り組んでいる。
センサーやモーターを手掛けるキヤノン子会社のキヤノン電子は、小型衛星の需要拡大の波を早くから捉えていた大手メーカーの代表格だ。ここへ来て事業化に向けた動きを加速している。
ソニーが、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)とともに、光通信システムに関してJAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同研究を始めたのは2016年3月。地上での実証実験を含む2年間のプロジェクトだった。ただし宇宙でしか検証できないことがあるため2017年10月に国際宇宙ステーションの日…
ソニーが宇宙事業への参入を表明したのは2018年2月。同社が見据えるのは、現行の光ファイバー網よりリアルタイム性の高い次世代インターネットインフラである。データの価値がますます高まるデータエコノミー(経済)の時代に、既存の光ファイバー通信システムを陳腐化させるポテンシャルを秘める。
宇宙分野にセンサーなどを1950年代の創業当初から提供している老舗メーカーの日本航空電子工業は、新たに宇宙事業に参入したベンチャー企業への営業活動を始めるなど、民需の取り込みを進めている。「1~2年前から衛星ベンチャーに向けて営業活動を始めた」(同社 航機事業部 事業部長代理の森元誠一氏)という。
宇宙分野にセンサーなどを1950年代の創業当初から提供している老舗メーカーの日本航空電子工業は、新たに宇宙事業に参入したベンチャー企業への営業活動を始めるなど、民需の取り込みを進めている。
シャープは、人工衛星など宇宙向けの太陽電池を、電気自動車(EV)やドローンなどの地上用途で展開していく。衛星用の発電効率が30%を超える高性能品を、地上用の大きな需要を活用することで価格を下げる。価格が下がれば、そのまま衛星用などの宇宙向けにも低価格で供給できると期待する。
宇宙関連の事業では新参企業となるさくらインターネットは、衛星データの幅広いユーザーに向けた事業を展開していく。クラウド上で衛星データやその解析ツールを提供する衛星データ活用基盤「Tellus(テルース)」の運用を始める。
衛星の軌道解析システムなどをJAXAへ提供してきた実績のある富士通は、今後、衛星による地表のセンシングデータを活用した新事業に期待する。衛星に搭載した光学センサーや合成開口レーダー(SAR:Synthetic Aperture Radar)が取得する画像データを活用する。
衛星メーカーとして大手のNECは、小型衛星の需要増大に対応し、衛星の低コスト化技術に磨きをかける。自社で運用する衛星で撮像した画像データの販売事業も2018年10月に本格的に始めた。
「当社の宇宙事業の50年以上の歴史の中でも経験が無い速度で現在の宇宙事業を取り巻く環境は変わりつつある」。こう語るのは、三菱電機の中畔弘晶氏(同社 電子システム事業本部 宇宙システム事業部長)だ。