クルマなどの交通手段を使った移動能力をサービスとして提供するMaaS(マース/マーズ:モビリティー・アズ・ア・サービス)。その先行例であるモビリティー系シェアリングサービスが国内で定着しつつある。各種サービスの現在地から未来のMaaSの可能性を探る本連載。第4回はタクシー配車アプリを取り上げる。

 「日本ではライドシェアが法律で禁止されている。そんなバカな国があることが信じられない」。ライドシェアサービスを手掛ける米ウーバー・テクノロジーズや中国・滴滴出行(DiDi)、シンガポール・グラブなどに出資するソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は2018年7月に開いた法人向けイベントでこう語り、ライドシェアサービスが日本で認められていない状況に強い不満を示した。

 日本の道路交通法は、自家用車を使った有償での運送を禁じている。楽天の三木谷浩史会長兼社長が代表理事を務める経済団体、新経済連盟が2018年5月に国土交通大臣などに「ライドシェア新法」を提案するといった働きかけもあるが、現時点ではライドシェアを認める方向にはない。欧州でもドイツやフランスなどは自家用車によるライドシェアを禁止している。

 グラブのドミニク・オング氏(戦略的自動車パートナシップ担当)は、2018年11月に都内で開催されたイベントで「東南アジアは交通環境が未発達で、日本のような素晴らしいタクシーサービスは存在しない」と語った。日本のタクシー業界を持ち上げつつ、交通や決済が不便な地域だからこそライドシェアサービスが広がったとの見解を示した。

 ライドシェアサービスが認められていない日本では、ここにきてタクシー配車アプリ業界の動きが激しくなっている。移動能力をサービスとして提供するという意味ではMaaSの先駆けと言えるタクシーは、“無駄”が多かったのも事実だ。客を乗せるまで街中を流したり駅前で並んだりする必要があるし、逆に需要が集中すると客がタクシーになかなか乗れない状況になってしまう。そのタクシーが、配車アプリを足掛かりに「日本版MaaS」の中核的な存在になろうとしている。

訪日外国人をタクシーに誘導

 「大阪を訪れた中国人観光客が、中国で使っているDiDiのアプリをそのまま使ってタクシーを呼べる」。2018年9月27日、滴滴出行とソフトバンクの共同出資会社、DiDiモビリティジャパンが大阪エリアでタクシー配車サービスを開始した。計1000台のタクシーを、中国向けと同じDiDiのアプリで手配し、決済もアプリ上でできるようにした。1000台の内訳は、第一交通産業の約600台と他の11社の約400台である。

「DiDi」はタクシーの運転者向けアプリを提供する
「DiDi」はタクシーの運転者向けアプリを提供する
(写真:DiDiモビリティジャパン)
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