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 三菱地所米国子会社のロックフェラーグループ・インターナショナル社(以下、ロックフェラーグループ社)が、米ニューヨーク、マンハッタンで進める築59年のレトロ超高層ビルの大規模改修。地下3階・地上48階のオフィスビル「1271アベニュー・オブ・ザ・アメリカス(AoA)」は、建物下層部から改修工事が進み、現在は上層階の壁を取り払って新しい窓枠を取り付けている。ロックフェラーグループ社で改修プロジェクトを統括するビル・エドワーズ・シニアバイスプレジデントは、「1271AoAの大規模改修は、建物のリポジショニング(位置付けの再構築)だ」と説明する。リポジショニングとは何か。その意味を建設現場から探る。

(関連記事:680億円かけてニューヨークのレトロ超高層ビルをペイ事務所が大改修

大規模改修工事中の1271アベニュー・オブ・ザ・アメリカスの38階。ビル外装のコンクリートを取り払って、新しい窓枠を取り付ける工事が進んでいる。ぽっかりと空いた壁面からマンハッタンを代表する名建築「メットライフビル(旧パンナムビル)」が見える(写真:日経アーキテクチュア)
大規模改修工事中の1271アベニュー・オブ・ザ・アメリカスの38階。ビル外装のコンクリートを取り払って、新しい窓枠を取り付ける工事が進んでいる。ぽっかりと空いた壁面からマンハッタンを代表する名建築「メットライフビル(旧パンナムビル)」が見える(写真:日経アーキテクチュア)
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 遠くにはマンハッタンを代表する名建築の1つである「メットライフビル(旧パンナムビル)」が見えた。ロックフェラーグループ社が既存躯体を残したまま大規模改修を進める1271AoAの38階。外壁がすっかり取り払われた工事現場には、冷たい風が吹き込んできた。ニューヨークの景観が一望できるこの大開口こそ、今回の改修計画の目玉だ。

1271アベニュー・オブ・ザ・アメリカス38階の平面図。図の右手が6番街となる。長手方向(東西)は約90m。テナントが自由にオフィス空間を設計できるように、無柱空間が続いている(資料:ロックフェラーグループ・インターナショナル社)
1271アベニュー・オブ・ザ・アメリカス38階の平面図。図の右手が6番街となる。長手方向(東西)は約90m。テナントが自由にオフィス空間を設計できるように、無柱空間が続いている(資料:ロックフェラーグループ・インターナショナル社)
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38階天井梁から見える鉄骨の一部。構造計算の結果、既存の躯体で十分な強度を保てることが分かったため、補修は行うが耐震補強は実施していない(写真:日経アーキテクチュア)
38階天井梁から見える鉄骨の一部。構造計算の結果、既存の躯体で十分な強度を保てることが分かったため、補修は行うが耐震補強は実施していない(写真:日経アーキテクチュア)
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 オフィスとなる38階は建物の長手方向(東西)に向かって約90mの無柱空間が続く。米国でも近年は働き方の多様化が進んでいる。ブースでの個室を区切るようなステレオタイプなオフィスは過去のものとなり、壁を取り払った大空間でレイアウトの自由度が高い職場環境が好まれるという。

 天井を見上げるとコンクリートの梁の中から鉄骨の一部が見えた。日本で大規模改修というと耐震補強を主目的として思い浮かべるが、ロックフェラーグループ社は今回の大規模改修工事において耐震補強は実施していない。改修設計を担当する設計事務所ペイ・コブ・フリード・アンド・パートナーズのジェイ・バーマン・パートナーは、「構造計算の結果、既存の躯体のままで十分であると分かった。ニューヨークでは地震の被害がほとんどないため、耐震に対する考え方が日本とは違うかもしれない」と説明した。

6番街から1271アベニュー・オブ・ザ・アメリカスを望む。下層階から改修工事が始まり、現在は上層階での作業が進んでいる(写真:日経アーキテクチュア)
6番街から1271アベニュー・オブ・ザ・アメリカスを望む。下層階から改修工事が始まり、現在は上層階での作業が進んでいる(写真:日経アーキテクチュア)
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 冒頭で触れたように、今回の改修の目玉は開口部の刷新だ。1271AoAの大規模改修では「窓」が意匠でも環境面でも重要な役割を果たす。そのため、工事は外壁のコンクリートを取り払って建物を丸裸にすることから始まった。オフィススペースの採光や開放感は、より良いテナントを呼び込む要因の1つとなる。ロックフェラーグループ社で改修プロジェクトを統括するビル・エドワーズ・シニアバイスプレジデントは、「オフィススペースの窓面は、従来比で5割から6割ほど拡大している」と説明する。

改修前の腰壁の高さ示すロックフェラーグループ社のビル・エドワーズ・シニアバイスプレジデント。窓面は従来比で約6割拡大した(写真:日経アーキテクチュア)
改修前の腰壁の高さ示すロックフェラーグループ社のビル・エドワーズ・シニアバイスプレジデント。窓面は従来比で約6割拡大した(写真:日経アーキテクチュア)
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