米国の若者の住宅に対する志向が変化している。「芝生を養生した緑の庭のある郊外のガレージ付き一軒家」といった典型的な住まいへの憧れは、今や昔。「ミレニアル世代」と呼ばれる20代半ばから30代の若い世代が、都市部の賃貸アパートをあえて選択しているのだ。とはいえ、そのアパートは、日本人がイメージする共同住宅と大きく異なり、非常に豪華だ。米国で徐々に増えている若者向けの新しいタイプの住まい。その背景には学生ローンの返済に今も苦しむミレニアル世代の悩みがあった。
26階建てビルの最上階に設けられた屋外プールの脇に立って周辺に林立する超高層ビルを眺めていると、なにやら自分が少しだけ偉い人になったような錯覚に陥る。ここは鹿島の北米現地法人カジマ・ユー・エス・エー社(以下、カジマUSA)が開発した高層賃貸アパートの屋上。普段はこの建物の住民だけが、屋外プールを使うことができる。
この建物は「スカイハウス」と呼ばれる。訪れたのは米ジョージア州アトランタ北部の新興住宅街、バックヘッドに立つ物件だ。屋上にはラウンジもあり、ビリヤード台が置かれたパーティースペースや、トレーナーが定期的に訪れるスポーツジムなどの共用アメニティーが充実している。建物エントランスにはコンシェルジュも常駐する。住民は高級ホテルで暮らすような生活ができるのだ。
米国の賃貸住宅は、郊外型の低層アパートが一般的だ。米国の住宅市場でスカイハウスのような共同住宅は珍しかった。カジマUSAは、11年から現在までに米国内で18棟のスカイハウスを建設。人口が増加している米国南部を中心に物件開発を進めてきた。こうした地域は「サンベルト」と呼ばれる。アトランタで開発した物件は、12年に地元紙アトランタ・ビジネス・クロニクルが選出する優良不動産の住宅部門で、最優秀賞を受賞している。