英国の歴史ある芸術組織「ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ」が創設250年の一環で、2018年に設けた「ロイヤル・アカデミー建築賞」。栄えある初回の受賞者となったのが長谷川逸子氏だ。現在は、中国を中心に設計活動を続ける。淡々とした語り口のなかに、女性建築家として、男性優位の世界の舞台で闘ってきた強い意志と努力が垣間見える。
ロイヤル・アカデミー建築賞の受賞はどんな反響がありましたか。
インターネットで公表された後、直接電話で連絡がありました。早々にピーター・クックさんや森俊子さんなど、海外にいる建築家の方々からメールでお祝いをいただいたり、過去に建築を設計した街の市長、県知事からメッセージをいただいたりしました。
でも日本の建築界からは反応はなし。事務所では、「日本の建築界に認知されない長谷川逸子」って言っていました(笑)。
世界での認知度は高いのに、海外で実現した建築が少ないのはなぜでしょう。
男性のパートナーがいないから。私の感覚では、それは大きかったと思います。欧米は特にそうですね。国際コンペで上位の成績を収めてきましたが、海外で実現した建築は中国だけですから。何度か米国のコンペで1等を取ったときも、最近ではオーストリアのコンペでも、必ず「パートナーはいないのか」と聞かれるんです。「いない」と言うとそこで仕事はストップする。
世界的にみても、女性建築家が1人で設計しているケースはまれです。世界の建築界は、まだまだ男尊女卑ですよ。米国でも欧州でも、男性の仕事ですね。女性建築家は、日本が一番多いくらいじゃないでしょうか。