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 デジタルアートで知られるチームラボの猪子寿之氏らに続いて3位となったのが、同じくデジタル技術を活用するライゾマティクス代表取締役の齋藤精一氏だ。大学で建築を学ぶも、別の道に進んだ齋藤氏は、異分野を知ったからこそ、建築の基本に忠実に読み解くことができる。建築と異分野をつなげることで、都市の文化形成を目指す。

2018年4月から東京・六本木の森美術館で開催された「建築の日本展」では、デジタル技術を活用した「パワー・オブ・スケール」を出展されました。あの作品が生まれた背景やプロセスは?

 自分自身が、「スケール感の分かる展示が見たかった」というのがきっかけです。どうしても建築展と言うと、模型や図録が多くなってしまい、スケール感が分からないと思っていました。日本の建築展では千利休の茶室「待庵(たいあん)」を再現して展示することを聞いていたので、それならば、同潤会アパートメントや中銀カプセルタワービルといった建築史に残る有名建築に加え、被災地の避難所など、社会的に重要な空間が一堂に会した場をつくろうと考えました。

ライゾマティクス代表取締役の齋藤精一氏(写真:山田 愼ニ)
ライゾマティクス代表取締役の齋藤精一氏(写真:山田 愼ニ)
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 映像とレーザーファイバーを用いて、実寸大のスケールを表現することで「どういう大きさで人は耐えているのか、暮らしているのか」を体感できるようにしました。タイムワープやスケールを飛び越えることができるといった、デジタルのやるべきことを、正当にまっとうにやったつもりです。

森美術館で出展した「パワー・オブ・スケール」。模型や図録ではなく、映像とレーザーファイバーでスケールを体感してもらうことを意図した(写真:ライゾマティクス)
森美術館で出展した「パワー・オブ・スケール」。模型や図録ではなく、映像とレーザーファイバーでスケールを体感してもらうことを意図した(写真:ライゾマティクス)
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 僕は、スケールや軸線だけではなく、建物のコンセプトの部分、例えば、そこに働く人や住む人に対して、どういうことを「すべき」なのかを考えます。そうすると、「建築をよく読み解いていただいて」と言われることがあるのですが、また初心者に戻ったから基本に忠実になっているだけじゃないですかね。

ライゾマティクスに建築部門の「アーキテクチャー」ができたのはいつ頃ですか。

 正式にできたのは会社設立10周年のときなので、2016年です。プロジェクションマッピングの台頭などで「メディアと建築」や「メディアと都市」のような組み合わせが取り上げられ始めて、13年ごろから建築界からの仕事の依頼が目立つようになった。それが仕事になり始めたのは15年あたりで、空間を扱うような部門をつくろうということになり、アーキテクチャー部門を創設しました。

スタッフは建築系の人が入ってくることが多いのでしょうか。

 建築系の人もいれば、僕みたいに建築を学んだけれど建築以外の道に進んだ人、建築とは全く別の仕事に関わっていた人など様々です。建築とは関係のない分野にいたスタッフでも、街づくりに関わっていることがライゾマティクスのユニークなところです。

 そういった人が関わっていったほうが、今までとは全く違う方向から、予想のつかないことができると考えています。建築や街の話になると、どうしてもスポットの話になってしまうのですが、領域的な話をしないといけない。

 簡単に言うと、上空から俯瞰(ふかん)して、「コンテンツがあるけど場所がない人」と「場所はあるけどコンテンツがない人」を結び付けるイメージです。建築界や自治体とのプロジェクトを通して、プロデューサー的な立場で俯瞰するようになりました。