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 2018年春、名古屋造形大学の学長に就任。教育カリキュラムを刷新し、自ら設計を手掛ける新キャンパスの校舎と教育方針の一体化を図る。さらに、「ローカル・リパブリック・アワード」の立ち上げという新たな挑戦も。設計活動では、台湾の美術館コンペに勝利、スイスでは空港付属の巨大プロジェクトが進行するなど、国内外を精力的に飛び回る日々は19年も続く。

名古屋造形大学では、愛知県小牧市から名古屋市へのキャンパス移転計画が進行中です。教育カリキュラムも大きく変えると聞きました。学長就任前の3月から、山本さんご自身のプロデュースで「都市は美学だ!」という連続シンポジウムを開催しています。

 かなり大胆な大学改革を行います。移転を機に、「都市美」という理念を大学の芸術活動の中心に据え、地域社会の人々の生活を快適にし、美しい環境をつくるための芸術活動に力を入れていきたいと考えています。その活動を通し、身近な地域社会に積極的に関わり、地域社会に貢献する人材を育てるのが目的です。

山本理顕設計工場を主宰し、名古屋造形大学学長も務める山本理顕氏(写真:日経アーキテクチュア)
山本理顕設計工場を主宰し、名古屋造形大学学長も務める山本理顕氏(写真:日経アーキテクチュア)
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 カリキュラムは、「美術領域」「映像文学領域(マンガ、イラストレーション、アニメーションなど)」「地域社会圏領域(建築、プロダクト、都市サイン、グラフィックなど)」「空間作法領域(ファッション、インテリアデザイン、カトラリー、グラフィック、家具など)」「情報表現領域(プロジェクションマッピング、データの視覚情報化、CGなど)の5つの学問領域に再編します。

 快適で美しい生活環境の実現には、それぞれの領域が相互に関係する必要があります。例えば、空間作法の美学が成り立つには、その作法の舞台である地域社会圏が存在することが前提となる。つまり、5つの領域の相互関係こそが、新たな芸術理念をつくり出していく。地域社会圏領域では私自身もスタジオを持ちます。

名古屋造形大学の「都市は美学だ!」のシンポジウムは全4回の予定で開催。18年3月3日に開催した1回目は「美しい都市は、住みやすい都市である。」をテーマに、憲法学者の木村草太氏(左)と建築史家の陣内秀信氏(中)を迎えた。18年12月7日には3回目を開催(写真:漆脇 美穂)
名古屋造形大学の「都市は美学だ!」のシンポジウムは全4回の予定で開催。18年3月3日に開催した1回目は「美しい都市は、住みやすい都市である。」をテーマに、憲法学者の木村草太氏(左)と建築史家の陣内秀信氏(中)を迎えた。18年12月7日には3回目を開催(写真:漆脇 美穂)
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 カリキュラムの改革と同時進行で、新校舎の設計も進めています。学長としての考えを反映し、新しいカリキュラムと一体となるキャンパスにしたい。名城公園東側の国有地を取得できるメドも立ち、2022年の開学を目指しています。

名古屋市内に移転を予定している「名古屋造形大学」の新キャンパスの完成イメージ。地下1階、地上5階建て。大きな屋根が浮いているような外観で、上層階は周囲に広いテラスが巡り、学生たちの活動が外から見えるようにする。2022年の開学を目指す(資料:山本理顕設計工場)
名古屋市内に移転を予定している「名古屋造形大学」の新キャンパスの完成イメージ。地下1階、地上5階建て。大きな屋根が浮いているような外観で、上層階は周囲に広いテラスが巡り、学生たちの活動が外から見えるようにする。2022年の開学を目指す(資料:山本理顕設計工場)
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キャンパスの中央に「アートストリート」を設け、店舗やギャラリーを置く。イベントなども開催できるようにして、学生以外にも多くの人が行き交う場所にする。敷地の地下には、市営地下鉄・名城公園駅がある(資料:山本理顕設計工場)
キャンパスの中央に「アートストリート」を設け、店舗やギャラリーを置く。イベントなども開催できるようにして、学生以外にも多くの人が行き交う場所にする。敷地の地下には、市営地下鉄・名城公園駅がある(資料:山本理顕設計工場)
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大学の教育内容の刷新を考えたのはなぜですか。

 20世紀以降の美術における、ファインアート(純粋美術)とアプライドアート(応用美術)という分け方には問題があると思っています。また、美術というと多くの場合、ファインアートを指し、美術教育では、自らのスキルを磨くことに重きが置かれている。そうした美術教育の在り方にも以前から疑問を持っていました。

 アーティストは、美術がプロパガンダ(世論戦)に利用された過去の苦い経験から、社会と関わることに非常に臆病です。「美術が社会的な役割を担う、社会に貢献する」と言った途端に、「美術は手段ではなく目的だ」と美術の純粋性を大切にしようとします。でも、美術は社会と関わらざるを得ないと思う。

 「社会」という言葉が抽象的で分かりにくいので、「誰に対して美術をつくるのか」と言い換えてもいい。表現する相手はやはり、私は、地域社会の人たちに対してだと思っています。自分の身近にいる人たちの生活を快適にしていくことは、芸術運動の重要な役割です。