2018年には、平田晃久氏の設計によるカプセルホテル「ナインアワーズ」が、東京などに4件誕生した。市民参加でつくった「太田市美術館・図書館」(17年)、現在、熊本県八代市で進めている歴史と伝統を継承するための施設――。平田氏のなかでは、これまで、そしてこれからのプロジェクトがつながりを持ち始めている。街や人の声に半分身を委ねることで、新たな方向性を見いだす。
「ナインアワーズ」は、立地する街ごとにどのように考えて設計していますか。
従来のカプセルホテルは、街なかの閉じた建築だったと思うんですが、「ナインアワーズ」は街のなかにカプセルを解き放つようなものとして考えました。何棟も設計していくうちに、カプセルと街との接点をどうつくるかが建築の仕事じゃないかと思うようになったんです。
そうすると、カプセルというニュートラルなものを通して、それぞれの街が再発見される。最も分かりやすいのが東京・浅草で、まわりの小さな店が3次元の状態でカプセルに巻き付くことをイメージしたら、そのまま浅草らしいホテルができました。新大阪では、新幹線が発着する上を飛行機がびゅんびゅんと飛んでいくような場所に立っている。大きな看板がいっぱいあって、その看板とカプセルの間にスペースをつくると、そこがいろいろな場所になっていくようなイメージで考えました。
同じようなプログラムで設計していても、ここで何をしたらいいだろうと悩んだことはなく、敷地に行ったときに、何となくここではこういうことをすればいいんじゃないか、というのが見えてくる。それは不思議な体験でした。自分で絶対こういうものがいい、と強く決めてつくっていくのではないんです。他のものに半分身を委ねながら、そのなかを泳ぐ感覚というか。委ね切るわけじゃなくて、設計に他者性を取り込むことで、すごく面白くなっていく。