PR

企業が2019年に成長するための「最強のデジタル戦略」とは。このテーマについて、日本を代表するCIOやCDO、有識者など40人が議論した。日経 xTECHが2018年11月21日に開催した「ITイノベーターズサミット」で出た発言のポイントを紹介しよう。

 新しいデジタルサービスの「PoC(Proof of Concept、概念実証)」を何度も繰り返しているが、なかなか成果が出ない――。デジタル戦略を巡っては、多くの企業に「PoC疲れ」が見え始めている。こうした現状を打破するためのヒントになりそうな、キーパーソンの名言を取り上げる。

イノベーションに必要なのは正確性ではなく、納得性

――早稲田大学ビジネススクール 准教授 入山 章栄 氏

 最新のイノベーション理論といえば、この人。ベストセラー『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)の著者である、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授だ。会合の基調講演に登壇し、世界の経営学者が研究している最新のイノベーション理論について解説した。

早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授
早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授
(撮影:井上 裕康、以下同じ)
[画像のクリックで拡大表示]

 入山准教授が「今の日本企業にとって最も必要なもの」として、声を大にして主張するのが「センスメーキング理論」である。組織のリーダーにとって重要なのは正確性ではなく、「納得性である」と説く理論だ。組織心理学者である、米ミシガン大学のカール・E・ワイク名誉教授が提唱している。

 センスメーキング理論では、リーダーがビジョンを掲げて、従業員や部下、さらには社外のステークホルダーにまで、心から納得してもらうことを最も重視する。例えば、20年後、30年後に会社や世界をどうしていきたいかを、リーダー自身が自分の言葉で語る。

 その主張は、正確な将来予測でなくていい。大事なのは、周囲の人に心の底から納得してもらうことだ。

 ところが「日本の大企業の多くは、周囲を納得させるビジョンを持たない」と入山准教授は手厳しい。仮にあっても、従業員が知らない。辛うじて知っていても、納得しないまま働いている。「心の底から納得する、いわゆる腹落ちこそが、今の日本企業に一番欠けていることだ」と、入山准教授は分析する。

 こうした納得不在の状況が、イノベーションを起こしにくい雰囲気をつくり上げているという。いくらデジタル化の専任組織をつくっても、集まったメンバーが仕事の意義を感じて納得していなければ、イノベーションなど起こせるわけがない。

 失敗が続いても「これが今、会社や社会のためにやるべき仕事だ」と、メンバー全員が腹落ちしている組織でなければ、前には進めない。腹落ちして初めて、「イノベーションに立ち向かえる」(入山准教授)。

 自分は今の仕事に腹落ちして取り組めているか、あるいは自分の部下を腹落ちさせることができているか。人の上に立つリーダーは2018年を振り返り、自問自答してみよう。

3つの「P」を変えてみよう

――SAPジャパン 代表取締役社長 福田 譲 氏

 ソフト会社でありながら、イノベーションの方法論を構築しようとしているのが、欧州SAPだ。「業務プロセスのベストプラクティスをERP(統合業務システム)としてパッケージ化したように、今度はイノベーションの方法論をパッケージ化しようとしている」と、SAPジャパンの福田譲社長は同社の戦略を語る。

SAPジャパンの福田譲社長
SAPジャパンの福田譲社長
[画像のクリックで拡大表示]

 具体的には「SAP Leonardo」という名称で、IoT(インターネット・オブ・シングズ)などと連携したクラウドサービスと、デザイン思考(デザインシンキング)を取り入れたイノベーションを起こすためのコンサルティングサービスを提供している。

 この他、SAPジャパンは、コマツやNTTドコモ、オプティムなどと共同で、建築業界向けのIoTプラットフォーム事業「LANDLOG」を手掛けている。「SAP自身もオープンイノベーションに積極的に取り組み、パートナー企業と一緒に知見やノウハウを蓄えている」(福田社長)。

 福田社長はこれらの経験から、イノベーションを起こすには「3つの『P』を変えるとよい」と切り出した。人(People)、プロセス(Process)、場所(Place)のことだ。

 人については社内の人材だけでなく、今まで交流がなかった企業や他業種の人たちとも手を組んでみて、アイデアを出し合う。ダイバーシティー(多様性)の尊重やオープンイノベーションの強化を意味する。

 プロセスは、これまでと全く異なる方法でプロジェクトを推進してみる。デザイン思考やアジャイル開発といった比較的新しい手法を取り入れてみるのは、その典型例だ。

 最後の場所は、チームが活動する拠点を、既存の事業部門などから切り離すこと。「新しいことをしようとすると、既存の事業部門から横やりが入る。江戸時代に長崎につくられた出島のように、特別な場所を物理的に用意すべきだ」(福田社長)。

 この意見に賛同し、かつ持論を展開したのが、花王の永良裕マーケティング開発部門マーケティング開発センター デジタルビジネスマネジメント室長。「ぜひ3Pに哲学(Philosophy)を加えて、4Pにしてほしい」と続けた。永良室長は、イノベーションには将来ビジョンが必要だと考えている。「ビジョンだと頭文字がそろわないが、哲学なら(Pで始まるので)ちょうどいい」と言って、場を盛り上げた。