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指先でチェックできる簡易型が普及

 冒頭に示したとおり、初期のパルスオキシメーターは、重症患者を長時間モニタリングすることを主目的としていた。対象としたのは、重篤な呼吸疾患患者などで、低酸素飽和度の状況を正確に把握できる測定が必要だったのである。

図●パルスオキシメーターの変遷
図●パルスオキシメーターの変遷
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 しかし今では日本や東南アジアにおいて、パルスオキシメーターは簡易型となり、汎用の呼吸・循環チェッカーに変化している。日本の市場比率は、従来型が約4%で、簡易型は約96%を占める。簡易化したことにより、広範囲の用途が開拓されたからだ。「指先だけで呼吸機能と循環機能を瞬時にチェックできる」という意義は大きく、その貢献度は計り知れない。本格的な医療用途の専用機に加え、一般向けの市場が広がった。

 市場動向と逆行するように、パルスオキシメーターの第三者認証基準の中にISO80601-2-61:2014が「自動的」に導入されてしまったわけだ。ここまで説明すれば、この問題の根深さが理解してもらえると思う。パルスオキシメーターという一般的名称は1機種のみのため、機器が大幅に簡易化されたにも関わらず、認証基準の難度は高まった。

 こうした重大なミスマッチの要因は他にもある。ISOやJISなどの標準規格の考え方は「あるべき(mayまたはshould)」だが、それを認証基準に取り込めば「必須(shall)」に変貌してしまう。装置の仕様や目的、効果の大きな変化にも関わらず、旧態然とした実情無視の異常事態になっている。

 近著の「成功する医療機器開発ビジネスモデル」(日刊工業新聞社、2019年1月刊)の中で、「法規制は機器開発と協調関係にあるべきだ」という趣旨を述べている。法規制によって医療機器の新規開発や改良が阻害されるとすれば、それは新しい医療の妨げにもなる。紹介したパルスオキシメーターの認証基準の過剰要求は、制度の大きな問題点を示す1つの事例にすぎない。