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 医療機器の開発については、最先端と称される高機能・高性能機器に使われる技術に注目が集まる。新技術というのは、これまでにない高度で想像を超えたもの、という先入観があるからだ。

 とりわけ医療機器の分野では、ロボット化やAI化、またシステム化をもくろんだ「高機能医療機器」についての話題には事欠かない。ともすると、こうした要素のない技術開発はありえない、という風潮さえ生んでいるようにも感じられる。

 実情はどうなのだろうか。実は医療現場で望まれているのは、必ずしも高度で緻密な医療機器だけではない。むしろ日常的な医療の場で常用される機器群・器具類などに、まだ見直されるべき諸問題が山積みになっている。点滴装置や体温計、血圧計、モニター類、ベッド回りなどなど、「新技術」という範囲からは程遠いと考えられている普遍的な分野だ。

 医療機器の開発テーマは多岐にわたり、その主目標は医療への貢献を模索することにある。それをターゲットとした医療機器群の中で、「かぶれない電極」の技術開発に関して、2019年4月9日に文部科学大臣表彰・科学技術賞が発表された。ここでは、その意義について考えてみたい。

図●文部科学大臣表彰・科学技術賞の表彰式の様子
図●文部科学大臣表彰・科学技術賞の表彰式の様子
(出所:アイ・メデックス)