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医療現場で役に立つ製品を追求

 心電図モニターなどに使われる「使い捨て電極」は、「新技術などありえない」と考えられているテーマの代表例だった。大学や大手企業でさえ、あまり関心を示さない分野でもある。ところが、このほど発表された平成31年度・文部科学大臣表彰・科学技術賞の技術分野に、アイ・メデックスの「長時間装着可能なディスポーザブル生体電極の開発」が含まれていた。これまで医療機器関連部門での受賞があまりなく、研究技術が中心で実用的な技術が少ない傾向にあった。

 本製品に関する、実用的な見地からの重要性については、本コラム『「かぶれない心電図電極」に見る新技術としての価値』で紹介した。要点を抜粋するなら、従来の心電図電極の「泣き所」ともいうべき“かぶれ”の課題に果敢に挑戦し、成果を得た点がポイントとなる。本来、使い捨て電極は「貼りやすくて剥がしやすい」うえに、「かぶれない」という二律背反に匹敵する問題点を抱えていた。つまり、「密着性を保ちつつ」「空気透過性を持たせる」という課題だった。この難題に対する回答が、新素材採用による解決策の提示だった。

図●かぶれない電極
図●かぶれない電極
(出所:アイ・メデックス)
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 アイ・メデックスは企業として、医療現場で実際に役に立つ製品という現実的な課題解決意識をもって開発した。「実用的な価値」と「ビジネスモデルとしての成功例」を有した技術開発だった。

 欲張った要求となるかもしれないが、こうしたサンプルを見る限り、医療機器産業における技術開発は、まだまだ拡大する可能性を秘めている。「電極1つにしても」というお決まり文句のような表現がよく使われることがある。これは1つの真理を表現している。

 医療機器開発のスタートが電極からだとしても、そこから次つぎに展開できる要素をはらんでいる。今回の表彰は、そのことを示唆していることも事実であり、これからの医療機器開発について、優秀なテーマとしてサンプルを示したことに意義が感じられる。